kamakurah

ケイコ 目を澄ませてのkamakurahのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.5
遅まきながら昨年から息長く話題になっている一本を、配信鑑賞。高評価相次ぐなか、周回遅れで、しかも配信での享受で何をか言わんやの感は否めないが、個人的には好感できる仕上がりではなかった。
岸井ゆきのの演技賞には異論なし。説得力豊かなキャラクターデザインと、それを等身大で具現化した演技力は上質である。しかしながら三宅唱監督の意図、狙いが十分に伝わらない。繰り返されるフェードアウトには何を託したのか。また、あえてドラマ性を排したと思われる、それによるリアリティの描出は、映画をエンターテイメントとして観ようとする者にとっては退屈である。イーストウッドの『ミリオンダラーベイビー』を引き合いに出すのはお門違いかも知れないが、20年経っても色褪せない作品力には学ぶべきものがあるはずである。武元春、岸善幸など、日本映画を支える監督たちと題材ゆえに比較されてもやむなし。歴史あるジムの閉鎖や主人公が逡巡ののち次戦へと決意をもって走り出す経緯や周辺事情について、もっと丁寧に語るべきではなかったか。刈り込んでの観客への作品提示だとしても、観る者が納得できる材料をさりげなくでも並べておいて欲しかった。
kamakurah

kamakurah