櫻イミト

他の人々とは異なっての櫻イミトのレビュー・感想・評価

他の人々とは異なって(1919年製作の映画)
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史上初めて男性同性愛を取り上げた映画。主演は「カリガリ博士」(1920)「笑う男」(1928)のコンラート・ファイト。原題は「Anders als die Andern §175(他人とは違って:刑法175条)」。 刑法175 条とはドイツで1994年まで施行されていた同性愛を罰する法律で、その違憲性を告発する社会派作品となっている。

※本作は大スキャンダルとなり翌年に公開禁止となった。フィルムは全て破棄されたが、後に海外で半分程が発見され、2006年にシナリオを元にスチル写真で補った復元版が発表された。

人気ヴァイオリニストのパウル(コンラート・ファイトは)は同性愛者だったが、同様の先人であるチャイコフスキー、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどが迫害された悪夢にうなされる。周囲には隠して生きてきたが、学生時代に親友との同性愛関係が教師に発覚し退学になった過去があった。それを知った悪党は口止め料として金を要求する。パウルは悩んだ末に、裁判を起こすのだが。。。

本編の半分が失われているため資料閲覧的な鑑賞となったが、制作姿勢は充分に伝わってきた。実際の精神科医も出演して”同性愛者は男女問わず性の第三症候であり異常でも精神病でもない”と解説する。医学資料として女装の男性、男装の女性などの写真が何枚も紹介されるところは教育映画の様な趣があった。

100年以上前の1919年に、性的マイノリティーの尊重を訴える映画がドイツで作られていたことは記憶しておくべき事柄だ。何十年も後にファスビンダー監督がその意志を受け継ぎ未来を切り開くことになる。

※本作の後にもドイツでは男性同性愛をテーマにしたサイレント映画が作られている。
「ミカエル」(1924)カール・Th・ドライヤー監督
「セックス・イン・チェインズ」(1928)ウィリアム・ディターレ監督
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