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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのtenのレビュー・感想・評価

5.0
コメディ版インターステラー?座席に1人、ぐすぐす泣いた!バカバカしいほど遠くまで飛べるというお守りのような言葉よ。
私も時々考える、ここではないどこかであなたと会っていたのかもしれない/ここではないとこかならあなたと生きていたかもしれないという感覚。

この監督の「スイス・アーミーマン」を観た時、なんて人生への愛に溢れた優しいコメディなんだろうと号泣(最初はただコメディ観て笑いたかっただけだった)した事があったので、監督が根底に持っている思想が今回も出るなら好きだろうと思ってましたが、予想通り大好き。「スイス・アーミーマン」で見せた監督の愛溢れる眼差しがより壮大な舞台にも劣る事なく発揮され、更にアカデミー作品賞を取ったことで世界に評された事がただただ嬉しい。
いつも書いてるけど、マクロの世界観の中でミクロを語るのが堪らない。石のシーンやばくない?もうだめ。

1年分のレビュー溜まってるので少しずつ古い物からレビューする気だったんだけど、Yahoo評価みたらボロクソ言われてて、意識高い人がわかってもないのに褒めてるとか書かれてていてもたってもいられなくて来た。
うるせーバース・ジャンプもできないくせによ!ってダメだ、これじゃあ監督の愛に溢れたメッセージを無碍にしてしまう。いやでもなんでこれ意識高くないとわからない系になるの?バカになって楽しめるやつだろ。
(ちなみにこれは過去に書いていて投稿せず溜めていたレビュー(を編集したもの))

スイス・アーミーマンといいエブエブといい、バカみたいにバカやって、それが生命力に繋がってるんですよ。必要なのはもっと遠くまで飛ぶ事。想像力の持つ力を充分に発揮する時、品を保っていちゃあたどり着けない場所がある。バカになんなきゃやっていけない事なんて沢山あるじゃん。ここでは始終愛のある"悪趣味"しかないけど、これがただの不快な悪趣味に見えるのであれば現実世界の大人しい悪趣味に慣れきってしまっているのではない?フェミ、ポリコレ、貧困、戦争、几帳面に社会へのメッセージを練り込むだけが良い作品ではないよ。まあぶっ飛んでるし賛否両論あるのはよくわかるけど、途中で退出した人は「ジャンプ台」乗れないんだろな〜。ピンチになった時にギョロ目シールが出てこないのはちょっと可哀想だけど仕方ないね。

壮大な舞台を前に笑い声まで出る優秀なコメディと思うずうるっと来る感動が目の回る映像と共に展開されていく、その宇宙のような目まぐるしい渦の中に観客を放り込み圧倒した末に行き着くのは、今ここにいる己の、他者の、肯定と愛というちっぽけな地点で。当然に存在し邪魔でさえあったモノは、何者にもなれなかったこの世界線の私でしか得られなかったモノ。壮大な旅路の後でこの場所に帰った時、なんて温かかったのだと思う事の愛おしさと幸せよ。
悪趣味でもなんでもいい!人生を謳歌する力を生成する道具として、悪趣味を華麗に使いこなす監督の力量と愛の眼差しに乾杯!そしてキー・ホイ・クァンの、気の弱い夫からウォンカーウァイ風のイケメンヒーローまで見事に演じ分ける技量に乾杯!ミシェル・ヨーとステファニー・スーの掛け合いも素晴らしかった。

どうせどんな人生送っても皆平等に最後には無に還るんだから、私は人生バカしてバース・ジャンプするぜ。
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