とうがらし

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのとうがらしのレビュー・感想・評価

3.1
混ぜるな危険!
A24と「スイス・アーミー・マン」の監督がお送りするSFアドベンチャーコメディ。

コインランドリーを経営する中国人系移民家族の母。
彼女は、国税庁の監査を受けている最中に、パラレルワールドの存在を知り、別の世界線のために戦う。

元々はジャッキー・チェンのために書かれた脚本らしいが、作り直してミシェル・ヨーにオファーしたのだという。
情報量が多すぎて、ついていけないが、現実逃避に、マルチバース理論を投入して、映画の歴史をごちゃまぜにした社会派パロディ。
(たぶんジャンルは一つに絞れない)

基本構造は、
「マトリックス」(ウォシャウスキー姉妹)+「千年女優」「パプリカ」(今敏監督)
そこに、
MCUのマルチユニバース。
さらに、
「インセプション」(クリストファー・ノーラン監督)
「アップグレード」(リー・ワネル監督)
「燃えよドラゴン」(ロバート・クローズ監督)
「2001年宇宙の旅」(スタンリー・キューブリック監督)
「聖なる鹿殺し」(ヨルゴス・ランティモス監督)
「サタデー・ナイト・フィーバー」(ジョン・バダム監督)
「花様年華」(ウォン・カーウァイ監督)
「さらば、わが愛 覇王別姫」(チェン・カイコー監督)
「ディザスター・アーティスト」(ジェームズ・フランコ監督)
「カメラを止めるな」(上田慎一郎監督)など
元ネタを挙げたら切りがないが、映画以外の小ネタも含めて、トリッキーにごちゃまぜる。

でも、ただのパロディにとどまらない。
マイノリティの生きづらさ。共依存。
そこから脱して、寛容な心で次の一歩を踏み出す話。

製作費2500万ドル(=約31億円)
ハリウッド大作に比べたら小規模だが、インディペンデント映画の基準上限(2000万ドル=約25億円)よりも、やや上回る。
手を替え品を替え、いろいろやってるので、予算的にはかなりカツカツ。
内容はA級ではないが、B級でもない。
所々安っぽいが、なんとか苦心した痕が見える。
演出はいろいろ滑っているが、少ない予算の中で結構頑張っているのは好感が持てる。

セリフは多いが、そこは適当に聞き流して、画の動きと変化に専念して観るのが吉。
パロディ要素が8割。
オリジナリティがあるように思えないから、佳作とは言えない。
だけど、観客を楽しませることを一番に考えて、ジェットコースター気分が味わえるエンタメ作品に仕上がっている。
映画館での鑑賞に持ってこい。

確実に言えることは、監督はかなりの日本オタク。
謎のベーグル推しは、良く分からない(笑)

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=wxN1T1uxQ2g
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