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生れてはみたけれどのnanaのレビュー・感想・評価

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
4.0

子供の世界と大人の世界

巨匠·小津安二郎による白黒サイレント作品。


戦前の日本。
都心から郊外に引っ越したサラリーマンの家族。
両親と二人の小学生の兄弟。
身なりもこざっぱりして、いかにも「都会のコ」✨

自宅も新しく、ハイカラで庭には洋犬エスもいる😊
当然、周りの子供たちは新参者に興味津々。

仲良くなりたい反面、子供同士のマウンティグ。子分にしたい。
しかし兄弟は、あっという間にガキ大将に。
お兄ちゃんの頭脳戦である(笑)
近所の金持ちのぼんぼんを子分にし、新しい子供社会に馴染んでいく。

まだ父親や教師が威厳を持っていた時代。

兄弟も大人を尊敬し、自分達の父親を一番偉くて恐いと思っているが、ある日上司である、金持ち子分の親に媚び諂う父の姿を目の当たりにし、ショックをうける💦


時代背景
まだ自動車が一般的でなく、洋風が高級で、映画は活動写真。
大人と子供の力関係は絶対で、家庭内での父親のポジションが絶大。母も父に対しては敬語を使う。大和撫子ですね🥰

だからこそ、この兄弟は傷つくのだろう。
そんな父(世の中)が許せなく、ハンガーストライキをしたり😓
今では考えられない父への崇拝。

遊び方も昔の子供らしく、お茶目で元気。いたずらも痛快だ😂
ちょっと神経質で慎重な長男と、天真爛漫な弟。
私はこの弟の、子供らしさが可愛すぎて好き💕
真っ直ぐな性格で、あ〜あ、😰と思う不器用さと、いつもお兄ちゃんの後をくっついて行く、憎めない可愛い奴だ。

偉い人に媚びる
こんな世の中、生まれては見たけれど…
初めて知る社会の荒波。

純粋でみずみずしく、ちょっと切ない。
でも、とってもチャーミングに癒される作品。


活弁上映で鑑賞。
一人の弁士が登場人物を全て演じきり、ナレーションを入れる。
男女だけでなく、複数の子供達の声の演じ分けは見事である。
楽師が、この上映に合わせて曲を全て作曲し、シンセサイザーによる生演奏。

活弁が好きで、よく足を運ぶが、この作品は特に良かった。
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