さちえ

母性のさちえのレビュー・感想・評価

母性(2022年製作の映画)
3.2
母親大好きな女性(戸田恵梨香)が娘(永野芽郁)を産み育てるお話。母目線と娘視点から話が交互で進んでいく。
同じシーンでも母視点と娘視点で異なる描写がなされ、どっちが本当かはわからない。
湊かなえがわりとよく使う手法ですね。

戸田恵梨香の実母である大地真央の上品な母親像と、夫の母親である典型的田舎者で下品な昭和の姑である高畑淳子の対比も印象的。
こんな姑と夫捨てちゃえば…と何度も思ったが、戸田恵梨香は高畑淳子のことも「母」という絶対的存在と思っているからあんなに尽くすんだろうか…時代的なものか…よくわからなかった。

ミステリーではなかったので、何かが解明されるわけでもなく、ただ歪んだ人間性を見せつけられるホームドラマであり、当然あまり後味もよくない。
ピーナッツ母娘なんて言葉もあるし、よくある話で、正直あまり存在意義のよくわからない映画だった。
各役者さんの演技力を楽しむにはよくできた映画かも。

私の母も、ルミ子のような人だった。
特に好きでもない父と結婚したのは祖母を安心させるためだし、私を産んだのは祖母を喜ばせるためとはっきり言っていた。
子供のときも祖母の家に行く際は、どう振る舞えば祖母が喜ぶかを叩き込まれた。
私に子が生まれたときも祖母が喜ぶわ、ありがとう、と何度も繰り返していた。
祖母が亡くなって10年経った今でも母は変わらない。母の中心にいるのは祖母。

自分が母となった辺りまでは、母にとって一人娘である自分が一番でないことに不満を感じていたけど今は何とも思っていない。
別に私も母性が強いタイプではないので子供ができたので満ち足りた、という理由ではない。子が自我を持つに従って、自分の腹から出てきた人間であっても、自分とは全く別人格の人間であることを実感できたと同時に、母と自分のことも切り離すことができたのかもしれない。
だから、清佳も子が産まれて何年か経つうちにルミ子のことなどどうでもよくなるんじゃないかなと思います。
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