人当たりの良い家族想いなエリート会社員・仁藤が妻と幼い娘を殺害するという事件が発生。
動機は「本を置く場所が欲しかったから」。
その動機に違和感を覚えたジャーナリストの鴨井は彼の無実を信じ事件の真相に迫ろうとするのだが…というお話。
人間の性(さが)や業を描いた濃厚なヒューマンミステリー。
映画や物語りっていうのは人間の人生を切り取り描き出したもの。
だけれど、物語と現実は似て非なるもの。
人間っていうのは、実際は凄く単純でいて、同時にとても複雑。
人間の人生は決して“物語”なんかではない。
だけれど人は他人の人生、とりわけ事件などが起きるとそこに解りやすい“物語”を求める。
犯人の人生、周囲の人間からの印象、過去のトラウマを掘り起こし、そこに一貫性を見出し物語を作り出す。
世の中で日々起きる事件をジャーナリストやワイドショーが仰々しい音楽や演出でそれらをまるでドラマの様に報道しますが、人の人生のバックにはBGMなんて流れてはいないし、殊更それを強調する演出なんて施されてはいない。
現実に起こる出来事にはみんなが納得しスッキリできる“オチ”なんてものはないのだ。
人々が何かに“物語”を求めるという事は、むしろ事実から遠ざかり、真実から乖離していくとても愚かな行為なのかもしれない。