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フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズのharuのレビュー・感想・評価

4.0
「ブレードランナー」原作者フィリップ・K・ディックによる短編集。1話完結で、ちょっと時間が空いたときに見やすい。
どれもすごくおもしろくてオススメです。

ep1真生活
仕事もプライベートも充実しまくりの警察官サラは、恋人からストレス発散グッズとして仮想世界での生活をプレゼントされる。そこでは自らの理想の世界で、理想の人物になれ、理想の生活を送ることができるらしい。ところがサラの仮想世界は、科学が発達する前の不便な世界で、妻を亡くした男が毎日苦しみを味わっている。現実と仮想世界を行き来するうちに、サラは本当の現実は果たしてどちらなのか疑うようになる。

1話めということで、かなりおもしろい。現実と仮想世界が錯綜し、見ているこちらも混乱していく。どんなに便利になっても人間はストレスを抱え続ける生き物。

ep2自動工場
人類が減少し、環境汚染が深刻化した未来。ロボットが運営する自動工場は、勝手に製品を各地に届け、環境破壊を続けていた。生き残った人類はそれを止めようと工場のカスタマーセンターに連絡するが、そこで驚愕の事実を知る。

オチは読めましたが、泣きました。主人公がジュノー・テンプルというだけですべてOKではありますが、オチも爽やか。シリーズ中最も後味が良いです。

ep3人間らしさ
戦いから戻った夫はすっかり変わった。妻に対し冷たかった夫が、レクサー星から帰還して以来、優しくヴェラを愛してくれるように。余りの変わり様に、ヴェラは夫がニセモノではないかと疑う。

夫は本物?それとも偽物?
その答えは、人間らしさ。では「人間らしさ」とは?哲学的でシンプルな話。個人的にかなり好きでした。

ep4クレイジー・ダイアモンド
エドはアンドロイド製造工場に勤め、「QC」と呼ばれるアンドロイドの量子意識の研究を行っていた。ある日女性アンドロイドのジルに、工場からQCを盗み出すよう依頼される。

まさにスティーブ・ブシェミが出てきそうな不思議映画。たぶんシリーズ中で最も難解。独特の雰囲気で、この話だけ浮いてる気がする。

ep5フード・メーカー
人の心が読めるティープと呼ばれる超能力者は、一般人から差別されていた。ある日ティープのテレパシーを無効にするフードが市中に出回り、ロス捜査官はティープの相棒オナーと捜査を始めるが、犯人を追ううちに二人の間に愛が生まれる。

心を読まれるって嫌だけど、読む方も大変。言葉だけではもちろん信用できないけど、仮に心の声が聞こえたとしても、人間の心は複雑で矛盾に満ちていて、それだけが真実とは限らない。本当の「信頼」とは何かを考えさせられました。

ep6安全第一
フォスターは、母親と共に田舎から都会へお引越し。新しい学校では多くの生徒がデックスと呼ばれる便利なブレスレットをつけ、安全が保証されている。フォスターも欲しがるが、反体制派の母親はデックスを購入すると当局から監視されることになるからと反対。ところが友達が欲しいフォスターは母親に内緒でデックスを購入する。

SFの定番「管理される社会」の危険性を訴えた作品。ニュースで流れるテロとは本当に起こったことなのか?人に流されず、自分の意志を貫くことの難しさ。それと同時にバカでいることの心地良さとその代償の大きさ。今のうちによく考えないとな。

ep7父さんに似たもの
大好きな父が、帰宅後にガレージで何かに襲撃されているシーンを目撃したチャーリー。ところがその後何事もなかったかのように無傷で現れた父に、違和感を覚えたチャーリーは、父の正体を暴くべく、友人と協力する。

ep3と同じく、何かに乗っ取られた父。ド定番のエイリアンものです。やはり父の能力を見せるには、45分では足りない。
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