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柳生一族の陰謀のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

柳生一族の陰謀(2020年製作のドラマ)
4.6
元和8年、二代将軍徳川秀忠が急死した。大坂の陣から7年あまり。将軍の死は徳川体制に動揺を与えると、幕閣大奥の一部で秘密にされ隠蔽された。何より、いまだ秀忠の後継者が決まっていなかったのだ。本来なら嫡男・家光(岡山天音)が三代将軍を継ぐことに異論はないはずだが、実母の於江与(斉藤由貴)が家光を愚鈍と嫌っており、弟・忠長(新井敦史)の方が将軍にふさわしいとの声が土井利勝(宅麻伸)を中心に幕閣の間で大きくなり始めていた。
将軍の死因をいぶかる土井は忍びを使って秀忠の胃袋を調べようとするが、突然現れた者に奪われてしまう。届けられた先は、将軍家剣術指南役・柳生宗矩(吉田剛太郎)。彼の検視により秀忠の死はヒ素を盛られたためと判明する。一体誰が…。宗矩に問い詰められた家光の小姓・松平信綱と乳母お福(後の春日局)(美村里江)が秀忠暗殺を白状する。将軍が家光を廃嫡する動きに出たためやむを得なかったのだと…。
宗矩は柳生新陰流の弟子・家光を将軍に据えるため陰謀を張り巡らせる。それは朝廷を巻き込み幕府を家光派・忠長派に分裂させ、柳生一族をも骨肉の争いに駆り立てる、仁義なき戦いの始まりであった…!
深作欣二監督、萬屋錦之助、松方弘樹、千葉真一らオールスターによる時代劇大作のドラマ化。
ストーリーは、概ね映画版と同じだが、いくつか細かなアレンジがされている。
徳川秀忠の死を幕閣の間で秘匿し、その中で跡目相続争いが、行われる。溝端淳平演じる柳生十兵衛たち柳生一族郎党は、宗矩から「秀忠は忠長一派に毒殺され、忠長一派は天下取りを狙っている」と嘘を吹き込まれ裏工作に駆り立てられたというアレンジがされることで、家光を将軍に推す一派の権力欲のために、真実を隠蔽し罪をなすりつけるドス黒さが強調されていて、柳生十兵衛が次第に宗矩の謀略に疑問を感じラストに宗矩に怒りを爆発させる伏線になってる。
徳川家だけでなく、柳生一族郎党の中でも十兵衛や茜と宗矩や宗冬の骨肉の争いがあることで、骨肉合い喰む争いにシェイクスピア劇的な色合いを加えている。
三池崇史監督作や「精霊の守り人」シリーズでアクション指導を担当した辻井啓司が、アクション指導しているだけに集団バトルだけでなく十兵衛vs烏丸少将のバトルや宗矩vs小笠原源信斎のバトルなど、迫力あるソードバトルが楽しめる。
心優しいキャラを演じることが多い溝端淳平だけに千葉真一のような男臭さが足りないが、だからこそクライマックスで宗矩に怒りを爆発させる鬼のような豹変ぶりが印象的な柳生十兵衛、深作欣二監督版よりドス黒さのあるリア王のような柳生宗矩の悪役の魅力を演じ切った吉田剛太郎、家光の屈折した心情を演じ切った岡山天音、柳生茜の可憐な心情を演じ切った飯岡まりえ、斉藤由貴や美村里江など、若手とベテラン俳優のがっぷり四つのアンサンブル、テレビドラマ版では千葉真一版のドラマを別格とするなら、ドラマ版では一番面白みがあり、権力による犯罪の隠蔽が幅を利かす現代だからこそ見るべき時代劇ドラマ。
もちろん深作欣二監督版の映画は、必見です。
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