ねまる

クリミナル: イギリス編 シーズン2のねまるのレビュー・感想・評価

3.9
ep2 ALEX
大きく息を吸い込んで、溜息をはいた。
吸い込んだときに膨らんだ肺から、息を出すのではなく空気を全身に広げていく感覚。
自分の中にあった満足感が増幅する。
満たされたんだという思いが嬉しさへ変わっていった。

私は、完全にアレックスを演じるキット・ハリントンの演技に魅了されていた。
このドラマは毎回容疑者と刑事が取調室で対峙する、ワンシチュエーション。
その中でキットは、レイプ犯として逮捕された容疑者を演じている。
回想も、前後談も、全くない。
あるのはアレックスの証言と、警察の証拠だけ。事件の真相は?

このドラマの冒頭、5分以上に渡り、
アレックス目線の事件が固定カメラのワンカットで語られる。
このシーンだけでアレックスという人物の人間性、事件の概略を伝える荒業。
5分以上もの時間を、同じ構図で1人で成立させるのは、確かな実力に基づいているのだろう。大作ドラマの主演では観られなかった繊細な演技。
こんな演技を観られることが嬉しいと心の底から感謝した。

取調室が進んでいくにつれて、
観客がアレックスをどう観るかが変わっていく、
その過程が彼の表情ともリンクして、
事件の真相を惑わせる。
どの方向に進んでいくのか、夢中になるばかり。
1度観て真相が分かった後でも、
またあの演技を観るために観たい、そんな風に思える素晴らしい回だった。




ネタバレはコメントに。
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