EDDIE

左ききのエレンのEDDIEのレビュー・感想・評価

左ききのエレン(2019年製作のドラマ)
4.0
今に抗えないビジネスマンに届ける応援歌。天才に勝てず、だけども人生の主役になりたい主人公のひた向きさ、諦めない心、這い上がる野心、サラリーマンの心に突き刺さる広告代理店デザイナーの物語。

いやー、面白かった!
今まさにサラリーマンとしての転機で、新しいことに挑戦しようとする自分にど刺さりした作品でした。
Twitterでもお世話になっている背骨さんからのご紹介。
最初は池田エライザがタイトルにもある「左ききのエレン」の天才役をやっているので、エライザ目的でした。

しかし、ドラマが進行するにつれて、主人公の朝倉光一役を演じる神尾楓珠に感情移入して、まさかの10話(+アナザーストーリー1話)を一気見してしまいました。
これサラリーマンでもがき苦しむ人間には共感できる部分が多いのではないでしょうか。仕事のあるあるからこの作品が届けるエールの意味でのメッセージ性、数々の名ゼリフと夢中になる要素がふんだん。

原作は読んでいないのでわかりませんが、本ドラマで天才側の人間山岸エレンがあくまで引き立て役に回っているという構成にも好印象。
天才には天才なりの苦悩があるのかもしれません。それはエレンが描けなくなるというスランプに陥ることから感じますが、あくまで彼女の存在は主人公の光一が一度折れそうになっても再度立ち上がるための“光”の存在として描かれていました。

会社でも石田ひゅーい演じる天才側の人間エースデザイナーの神谷雄介が光一の上司として、絶妙な飴と鞭を与えながら光一は成長していきます。
だけど、そこは会社という組織。中盤から登場する丸山智己演じる鬼上司の柳一が言っていた会社にいる4種類の人間。これがまた「なるほどな」と共感せざるを得ませんでしたが、“替えのきかない有能”である神谷は光一の前から去り、そして光一の前に立ちはだかったのが柳です。
あまりにも恐ろしい前時代的なスパルタ指導。神谷の手から離れ、柳のもとで育つことで、光一はどんどん闇堕ちしていくんですが、彼は様々な人間との関わり合いの中で“主役”に近づいていくんですね。

とはいえ天才のような“主役”になるのではなく、彼らには彼らにしかできない役割があり、その中で輝きを増していく。そんな導き方が今の私に大いに刺さりました。

個人的には序盤の方の石田ひゅーい演じた神谷上司のパートが特に好きでした。「できないやつの気持ちなんてわからない」と苦言を呈される場面もありましたが、彼はデザイナーとして天才でも1人の上司として部下と向き合う努力をしていました。それがとても好印象。だけど、それがすべて上手くいくわけではないというところが現実のサラリーマンとも上手くリンクしていて現実味が強く感情移入しやすかったです。

天才モデル岸あかり役の八木ありさ、コピーライター志望の営業マン流川俊役の吉村界人、光一の同僚である三橋由利奈役の今泉佑唯、光一の学生時代の恋人でエレンのマネージャーを務める加藤さゆり役の中村ゆりかと個性的で魅力的なキャストが多い中で、主役の光一役の神尾楓珠が特に際立っていたのは作品のテーマ性とも合致してかなり好感が持てました。
個人的な好みでいうと流川の部下として登場する朱音優子役の田中真琴が好きでしたね。全体的には影が薄いんですが、U-NEXT限定の流川を主役にしたアナザーストーリーで流川と朱音が中心になるので注目して観ていました。

けど、とにかく印象強かったのは丸山智己演じる柳ですね。今の時代にあれやると完全にパワハラで訴えられるレベルですが、ドラマというフィクション、エンタメ作品としてあの特異なキャラは主人公を成長させる上でとても大きな役割を果たしていました。

演技の面では全体的にちょっとイマイチと思う部分もあったのですが、とにかく作品のテーマ性や心に刺さる台詞の数々に満足度が高いです。結果的に明日からも頑張ろう!と前向きにさせてくれるドラマでした。
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