こたつむり

トリック新作スペシャル2のこたつむりのレビュー・感想・評価

トリック新作スペシャル2(2010年製作のドラマ)
4.0
★ 紅き空に墨が滲んでいく
  いつしか僕も闇になったようだ
  だから 帰れない だから 返せない
  家に響くのは僕の声だけだから

個人的には『TRICK新作スペシャル』最高峰。
某横溝正史先生の作品をオマってオマってオマージュした感じの仕上がりは、ミステリ好きならば思わず尻尾が動く案件。こういうのを待っていたのです。

脚本を仕上げたのは安定の蒔田光治さん。
いやぁ。やはり、良いですね。シリーズの最初から関わっているからか、その筆致に無理がありません。勿論、堤監督の演出も分かった上で脚本を仕上げているのでしょう。

また、今回のゲストは浅野ゆう子さん。
存在感が格別ですね。後年の『SPEC』のときも思いましたが、トレンディドラマ全盛期の頃よりも魅力的です。ちょっと“くだけた”感があって味わい深いんですよね(当時は浅野温子さんの方が“くだけた”役割でしたな)。

あと、物語の小道具や設定も良いですね。
“契り祭り”という設定を真ん中に据えて、山田と上田の関係性に何か進展があるのかも、と期待させ、それとは別に子守唄で不気味な印象を醸し出す。若干、二番煎じは否めませんが、シリーズが長く続けばマンネリも当然。開き直れば良いのです。

というか、これまでの様式は打破しています。
インチキ霊能力者との対決、というよりも、主軸はお家騒動ですし、山田と上田の絡み方もこれまでとは違った雰囲気がありました。

これは土曜ワイド劇場っぽいなあ。
…なんて思ったら、実際にその枠で放映したのですね。確かにミステリドラマの原点は土曜ワイド劇場。これまでの延長線で描く『TRICK』は劇場版があるわけですから、とても素敵な選択だと思います。

まあ、そんなわけで。
同時期に劇場公開された『劇場版TRICK 霊能者バトルロイヤル』よりも好きな物語。何よりも後味が最高です。夕焼けの向こう側にぽつねんと佇む影。それは寂寥の赤と黒。怖くて切ない。地上波で放映した時にリアルタイムで鑑賞していたら…格別だったでしょうなあ。
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