ネガティヴガール

北斗 -ある殺人者の回心-のネガティヴガールのネタバレレビュー・内容・結末

北斗 -ある殺人者の回心-(2017年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

自分用メモ〜

ネタバレありの感想。
主人公の北斗は生後間もない頃から両親から身体的、精神的虐待を受け続けていた。外でのストレスを発散するように針金ハンガーで血が出るまで北斗を殴り続け、精神不安定な母親はそれを黙認し時には参加する。
施設に保護され高校生の時から里親、綾子の元で暮らし始めるようになり少しずつ日常の幸せを噛み締めながら生きる北斗だったがある日、綾子の末期癌が判明。
そんな中、綾子の友人から「末期癌にきく水」という一本何万円もする物を勧められ頭ではおかしいと分かっていながらも日に日に衰弱していくが水だけは欲しがる綾子の為に自分の貯金を切り崩していく。

「泣くとうるさいから殴りました、手で殴ると自分の手が痛いから針金ハンガーを使った、逆らうと私があの人の標的になるから仕方なかった、北斗がいるから私は不幸になった、あの子はいなければよかった、北斗を殴った後はあの人から必ず激しく求められた。」というのが母親の供述。法廷で母親の腹を見た時に一番ゾッとした。
「遺伝子上での親」という言葉が何度も出てきて印象的だった。
「僕には優しくされる価値なんかない、優しくされると怖くなる」と言い、わざと嫌われたりるように破壊行動を起こし相手を試す行為をする北斗、常に何かに怯え自分が存在している事に大きな罪悪感を抱いているように見えた。「お前の名前は北斗七星から取った、俺の事を一生忘れるなよ」と北斗の額をドライバーで抉り傷をつけ父親は自殺。
里親の元で過ごしていた数年が北斗にとって本当の幸せの時間だったように感じた。日常的な当たり前な事を子供の頃から与えられ恩恵を受けてきた人には到底分からないし気づくことは無い日常の些細な事が本当の幸せなのではないかと改めて思った。北斗のような立場の人間こそ幼い時に救われて幸せになるべき人物だった、殺人犯になる前にどうにかして彼を救えなかったのか、と深く考え込んでしまった。北斗は水の事を誰にも相談しなかった、人を頼るという事に罪悪感を感じていたり自分で何とかしようとする所、さりげなく紙を隠す所、何でも1人で背負い込もうとする所、弱さを人に見せない所、優しに溢れている面がある所。
殺人は法律で許されない、本当の被害者とは何なのだろうか。人は自分の立場によって意見や考え方が変わる。自分の大切な人が容疑者になったとしても救いたいと思い、被害者遺族になると容疑者の死刑を望む。当然、被害者からしたら犯人の生い立ちなど知った事ではない、犯人からしたら被害者のこれまでの人生は、
とか本気で色々と考えさせられ、俳優の演技が迫真でとても惹き込まれる演技でした。やつれ方、睡眠不足でしか出せない目のクマ、変わっていく目つきなど。
勉強は常に成績トップの北斗、というか100点以外は認められない環境下。
「あの団地から僕が逃げられなかったように今の貴方は法廷から逃げられないんだよ。」
北斗についた弁護士が死刑制度に断固反対の考えを持っていて北斗の許可無しに遺伝子上の母を法廷に連れてきて発言させたり「負けるな!生きろ!生きろ!逃げるな!」と執拗に北斗に浴びせ続けるシーンがキツかった。今回は善良な人々が詐欺に遭い最悪の結果を迎えた物語であったが藁にもすがる思いで頭では分かっていても自分の感情に気づかないフリをして水を購入し続けていたように見えた。有名大学に受かる頭脳明晰の北斗が詐欺に気づいていない訳がなかった。
「依存」
そうしなければ壊れそうだったから。
運命や人生とは本当に理不尽で、平等など到底存在しない。
石田衣良の作品に最近興味を持ち色々小説を読んではいるが今までのイメージが覆るような重い内容だった。
「1500人程虐待された子供を見てきましたが北斗くんは最悪のケースの3人のうちの一人でした。一人は実親に殺害され、一人は自ら命を絶ちました。生きているのは北斗くんだけです。」

精神的に元気な時に観るのをおすすめ、だけどいい作品でした。
フォロワーさんのレビューを見て鑑賞。