みや

同・級・生のみやのネタバレレビュー・内容・結末

同・級・生(1989年製作のドラマ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【青春時代の煌めき】

大学生から社会人になる不安定な時期における男女の恋心の変化を描いたラブストーリー。

脚本家・坂元裕二の連続ドラマデビュー作(原作:柴門ふみ)である。

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主人公・名取ちなみ(安田成美)と鴨居透(緒方直人)の恋が終わって、二人の関係性がただの「同級生」になるまでの紆余曲折を描く。

バブル時代のトレンディドラマ全盛期の作品で、恋心が右往左往する様が本作の魅力の一つでもある。

当時坂元裕二はまだ22歳でありながら、心理社会的モラトリアム期に、子どもから大人へなろうとするもうまくいかず、いまいち実感の湧かない登場人物たちの心の機微を巧みに描いている。

OPがキラキライチャイチャしている映像だが、本作の内容はずっと重くて苦い恋が展開される。

だがそれも、OPのような時代があったからこそ引き立つ反動だと気づき、素晴らしいドラマの構成になっているなと実感した。

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学生時代という人生で最も輝かしい期間に出会った大切な友人は、別れてからも特別な存在で、忘れられない人物として心に残り続けるという希望的観測で物語は締めくくられる。
 
ちなみ
「鴨居くんは私の青春のすべてでした。二十歳の頃、鴨居くんと過ごした季節は私の宝物です。鴨居くんと一緒にいた時間が、ただそれだけの時間が、今こんなにも輝いています。……(中略)時の流れは誰にも止められません。でも、悲しんでばかりはいられません。過ぎていく時間があるから、新しい時間があって、今の私がいるんですよね。鴨居くんと一緒にいた頃の私も大切だけど、今の私も気に入っています。……(中略)私たちの選択が正しかったかどうか、まだわかりません。一生答えは見つからないかもしれない。でも、後悔はしないつもりです。『恋は終わったけど、愛は残った』っていう感じかな。もう二度と笑顔に戻れないんじゃないかって思ったくらい悲しいこともあった恋だったけど、でも最後に言えるのはやっぱり、ありがとう。卒業の長い儀式がやっと終わったような気がします。すべてこれから始まるんだと思います。鴨居くんとの思い出をいつまでも大切に心の中にしまっておきたいと思います。さようなら。名取ちなみ」

坂元裕二の代名詞とも言える手紙によるメッセージはデビュー作から顕在で、誰しも経験した、あるいはこれから経験するであろう「青春の煌めき」を視聴者に訴えかけている。

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また、本作で注目すべき点は固定電話が「二人のすれ違いを表す装置」として機能していることだろう。

終盤を除くほぼ全話で登場する電話をかけるという動作は、時に相手に繋がらなかったり、かけ違いになったり、はたまたお互いの気持ちが別の方向へ向かっていることを示唆しており、固定電話が段々と普及し出した時代の趨勢を的確に捉えた描写であると言えよう。

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加えて個人的な感想ではあるが、映画『花束みたいな恋をした』が本作の現代版アップデートであるように感じた。
みや

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