mende

またの名をグレイス シーズン1のmendeのレビュー・感想・評価

4.3
今年のアカデミー賞で脚色賞を受賞したサラ・ポーリーの脚本。原作はマーガレット・アトウッド。
この作品をなぜ今まで見逃していたのか、自分の情報収集能力の低さにがっかり。でも遅ればせながらも見られてよかった。素晴らしく面白かった。

19世紀の実在の女性、グレイスという殺人容疑者をモデルにしている。
グレイス(サラ・ガドン)はアイルランドから移民としてカナダにやってきていかに過酷な生活を送ってきたか。女性というハンデがいかに重く背中にのしかかっていたかが描かれる。
でもグレイスは、はかなげで、おとなしげで、清純で上品な美人でもある。

グレイスは生き抜くために、相手に気に入られる「自分」になる。
自分を偽りたくないという、男性心理学者とは対照的だ。グレイスはそんな悠長なことはやってられない。

グレイスは弁護士にも心理学者にも真実を語っていない。自分を好きにさせるアレンジを使っている。「女の辛い話は男の好物」とグレイスが言うように、彼女は気の毒で不憫で愚かで美しい女として彼らに相対する。
そういえば日本の演歌に出てくる女にそっくりだ。西日のあたる部屋に住んでいたり、今では指輪も回るほどやせてやつれていたり、いつまでたっても馬鹿な私だったり。この手法は今でも有効なのだな。
このあたりは『エクス・マキナ』とも似た構造だと思う。

シスターフッドを感じさせる部分は、ややできすぎな気もするが、それでもやはりほっとする。

ほぼ同時代のアメリカの詩人、エミリー・ディキンスンの詩が効果的に引用されている。
mende

mende