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ER緊急救命室Ⅺ<イレブン・シーズン>のMIDORIのレビュー・感想・評価

3.5
ついに最後のオリジナルキャスト・カーターがこのシーズンで降板。同じNBCのドラマで同時期に放送していた“LAW&ORDER”は、キャストの入れ替わりがかなり激しいものの、それが面白いドラマとして成立していましたが、“ER”に関してはオリジナルキャストのキャラクター性が面白かった分、減るごとに面白さも減ってしまっているのが残念。シーズン11は思わず涙が出そうになるようなエピソードも多くて、シーズン9・10が微妙でしたが、久々に面白いなと思ったシーズンでした。

⚫︎カーター⚫︎
ケムとの子に不幸があり、ケムも去り、精神的に不安定になり不眠になってしまう。その後はコーデイに無茶な移植手術をお願いしてコーデイが病院を退職したり、かつての教え子ヘンリーの製薬会社が提供している薬の副作用で少女が重篤な症状に陥った時、副作用を公表しようとして騒動になったり。中盤から終盤にかけて、カーターはカウンティーで働くだけでは患者を助けきれないと感じたことから、HIV治療などが出来る病院の建設を計画。元々はカウンティーと共同出資でしたが、建設費を全てカーター財団が出す代わりに、命名権をもらいました。そして、久々にルバドーが登場します。まだ外科レジデントだった頃のカーターがルバドーの妻に手術を勧めて手術を受けますが、予後が望めない状態のルバドーの妻とルバドーに治ると嘘をついて結局亡くなってしまうエピソードがありました。カーター降板前のクライマックス直前で、“もう嘘はつかない”という過去精算。最終話直前にケムの親が髄膜炎になったことから、急遽パリへ飛ぶカーター。ケムとの再会で思いが再燃して、それがカーター退職の引き金に。カーターの最後の患者は医学生だったカーターが取り上げた赤ちゃんでした(多分シーズン1の4話「ヒット・エンド・ラン」)。私はこのS1S4をきっかけにERにハマったので、これがカーターの最後の物語だと思うと感慨深いです。最後は過去エピソードのスライドやERを去ったメンバーの言葉が流れてきて、シーズン8以来に感動しました。このドラマはカーターのER実習1日目から始まり、シーズン11ではベテランドクターとして若手を率いる存在に。外科志望の医学生だったカーターは、グリーン先生から是非ERに来てほしいと言われるがそれを拒否して外科へ行くものの、外科レジデントになった後、ERで治療することの面白さに目覚めて、グリーン先生の下でレジデントとして働くことに。その後はルーシーとともに負傷した事件などで薬物中毒になったり、ルカとのアフリカ医療支援を経て、スタッフドクターになり、終身在職権を得ますが退職。ドクターや看護師みんなから愛されていた優しいカーター。ERはこのシーズンの後にさらに視聴率ガタ落ちになるので、カーターが降板するシーズン11か、グリーン先生が降板したシーズン8で終わらせるべきだったと思いました。

⚫︎コーデイ⚫︎
カーターから強く懇願された違法なお願いを聞いたところ、案の定委員会にかけられてしまい、「アナタのためにこんな妥協案を用意した」というケリーの案に納得いかず、ついに去る決断をする。マークを亡くし、師のロマノを失い、友人のベントンもいなくなってしまったコーデイにとってはもうカウンティーに残る理由がなく、エラとともにロンドンへ帰っていきました。

⚫︎アビー⚫︎
前回シーズンの最終話で晴れて医師になったアビー。シーズンプレミアでは、Dr.ロックハートと刺繍された白衣を渡されて、「私はDr.ロックハートよ」と自信を持って名乗る姿が印象的でした。早速運ばれてきた生死を彷徨う患者の対応で思わず「まだ続ける?」と周りに聞いてしまったアビー。でも周りから「ドクターはアナタよ」と言われてハッとしていた姿は、医師になってすぐの治療でこの後どうするのか周りに聞いて「ドクターはアナタよ」と言われていたカーターと重なります。熱心にアビーを口説いてきた医学生ジェイクと付き合うことになるが、明らかに温度差がある(笑)

⚫︎ルカ⚫︎
最初に登場したときからロス先生がいなくなった後の色男キャラ補充だったので病院中の女性と関係を持っていましたが、シーズン9あたりからこれまで以上にプライベートが乱れすぎて、ルカ役のゴラン・ヴィシュニックも何となくカッコよく見えないという現象が起きていましたが、サムと付き合うようになってからようやく落ち着いて、ルカ(というよりゴラン)ってこんなにカッコよかったっけ?と私の中で目の保養になってます。ニーラに指導してるときのルカかっこよすぎて、よくニーラ耐えてるなって思います…あんなイケメンが常にパーソナルスペースにいるとか、気が散って仕事に集中できません(笑)サムとアレックスをとても大切にしていて、サムと仕事をしているときのルカはとても輝いてみえました。本当にかっこいい…かっこよすぎる…。

⚫︎グレッグ⚫︎
生意気なグレッグですが、レイ・リオッタがゲストで出演した6話「末路」がとても良かったです。父親の介護に疲れて今までのチェンの姿では無くなってしまったチェンを最後まで支えているのも良くて。ガサツそうなグレッグですが、意外と人情もあって、嫌いになれないキャラです。

⚫︎ニーラ⚫︎
真面目な性格なため勉強は出来るものの、医師としての対人能力に欠けているニーラ。それによって起きる患者との摩擦などもこのシーズンの見どころ。とにかく言われた通りにやるニーラだからこそ、患者を早く帰すように言われて早く帰したら「カルテは作ったのか?」と言われたり、丁寧に診察したら「早くベッドを空けろ」と言われたり、私もニーラタイプなので、こういうのうんざりだよね〜と思いながら観てました(笑)イラクのガラントとカウンティーのニーラを交互に映した16話「こちらとあちら」面白かったです。言われた通りにやっても上司から文句を言われてウンザリしていたニーラにプラットが「最近デートしてるか?息抜きになるぞ」と言って、家に居たレイのバンド仲間と早速良い雰囲気になるのも良い…ニーラ、言われたことはちゃんとやる有言実行派(笑)レイのバンド仲間を演じたミーシャ・コリンズがカッコよくてそれも良い。

⚫︎レイ⚫︎
ミュージシャン兼ドクターでプレイボーイという異色のドクターが登場。対人能力には優れているものの、ドクターとしての意識の低さから起きるドクター間の摩擦が多いキャラ。ニーラとレイを足して割ったら最強なのですが、人間なのでそうもいかず。そんなレイとニーラはシーズン中盤からルームシェアを始めます。レイのバンド仲間がいつも転がり込んできて迷惑そうなニーラとの関係も面白いです。シーズンフィナーレでは、みんながカーターのお別れパーティーに参加しているところ、モリスと共にミュージシャンのパーティーに参加したレイは、パーティー会場のポーチの床が丸々抜ける事件に遭遇。負傷者の被害程度を短時間で評価して病院へ搬送したレイは、大活躍。パーティー後のカーターから“自分への手紙”の話を聞いて、同期のレジデントと共に手紙を書きます。

⚫︎サム⚫︎
息子アレックスが気に入っていることからルカとの交際も順調に思えるが、アレックスの実父の登場などが話をかき乱していきます。全身負傷したレイプ被害者を治療する回では、あまりにも残酷な犯行のため、刑事に協力して事情聴取のために患者を起こしたところ、それが患者の致命傷となる事件が起きます。その件ではルカが揉み消したため、何事も無かったように話は終了。感情に流されてたまにそういう無茶をすることもありますが、基本的にはとても優秀な看護師です。終盤で再びアレックスの実父が登場して、クズの実父を追いかけてアレックスが失踪。サムがアレックスを溺愛するあまり、自分の息子のヤバさに気付いてなさそう。

⚫︎ドゥベンコ⚫︎
コーデイと入れ替わりで入ってきた外科医。うんちく好きで、とてもロジカルシンキングな今までのERにいなかった新種のドクター。感情的な性格の外科医が多かったカウンティーですが、この人はとても穏やかで人柄も良く、見ていて悪い気分になりません。話の長さからレジデントに鬱陶しがられてるのは笑いました。

⚫︎ケリー⚫︎
どんどん偉くなって登場回数が減っているケリー。ケリーの口うるささがこのドラマの面白味でもあるので、登場回数減らさないで欲しいです。探し続けていた実母が突然現れ、ケリーを養子へ出した経緯などを話します。そして、ケリーは自分がレズビアンであることを母に伝えますが、信仰心の強い実母はケリーに対して「祈ろう」とか「なぜその道を選んだ」など酷いことを言います…でもLGBTであることは、“今日から女性を好きになろう”と決めてなるものではありません。ケリーの足の障害が生まれつきであるように、ケリー自身が選んでそうなったのではなく、女性が好きであることもケリーそのものなのです。ケリーが選んでなった道はドクターだけで、本当のケリーを否定されるのはとても辛かったと思います。

⚫︎スーザン⚫︎
ER部長に昇格したスーザンは、レジデントの指導やドクターのレベルを統一してERの回転を早くすることに必死ですが、スーザンが頑張っても統一されるどころか、好き勝手やられて大変そう。今までルールを破る側だったスーザンも、これでケリーの大変さが分かったのではないでしょうか(笑)とはいえ、ER部長として必死になるあまり、言ってることとやってることが違うこともしばしば。治療のことでニーラを叱って担当から外した後、スーザンも同じことをして、サムとニーラから「スーザンはやっていいのね」と陰で言われていたり。カーターからも「君らしくないよ」と言われる始末。スーザンのやりたいことも分かるけど、スーザンが昇格したのは、これまでの医師としての対応を買われたからであって、それが変わってしまうのであれば、別にスーザンがER部長でなければいけない理由はないんですよね。こういうのを見てると、いつだってブレないケリーは本当にすごい。

⚫︎モリス⚫︎
役立たずのドクターで、役に立たないのにプライドの高さだけは人一倍の職場にいたら殺したくなるくらい嫌いなタイプ。グレッグが辞退して空いたチーフのポジションに何故かモリスが就いて余計にイライラさせられました。カーターが去る時、「君がリードしろ」と言われますが、この言葉がまさかモリスに送られるとは。グリーン先生→カーター→モリス?そろそろドクターとして役に立ってほしい。

⚫︎その他のゲスト⚫︎
一番はなんといっても6話「末路」で登場したレイ・リオッタです。アルコール依存症で元殺人犯の末期患者という役柄を殆ど目力で演じきりました。緊張感があり、とても見応えのある回で、見事にエミー賞ゲスト男優賞を獲得しています。15話「群衆のなかの孤独」では、SATCのミランダ役シンシア・ニクソンが登場。脳卒中で麻痺を起こしてしまい意識はあるのに言葉が出ないという役を演じています。半身麻痺になっている役なので顔は特殊メイクで麻痺しているように見せていて、シンシアは声だけで役を演じました。11話では、シーズン4でグリーン先生が患者から訴えられたときに弁護した弁護士役のダン・ヘダヤが再登場。あの時はめちゃくちゃ面白かったのに、今回は微妙な役どころでした。12話では、シーズン4でカーターに教えてもらう医学生ヘンリーを演じたチャド・ロウ(ロブ・ロウの弟)が登場。医学生の頃からコミュニケーション能力に欠けていて、医師免許のためだけに研修を受けに来たヘンリーでしたが、その後製薬会社で新薬販売を行い、その副作用で少女が危篤になる事件が起きて、そのときものらりくらりしていたヘンリーにイライラ…チャドの演技上手いです。
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