ジェイコブ

キャッスルロック2/キャッスルロック:ミザリー ~殺人へのシナリオ~のジェイコブのレビュー・感想・評価

5.0
アニー・ウィルクスは過去にある重罪を犯したことにより警察から追われ、娘のジョイと共に町を転々としている。ジョイには、自分達にとっての理想郷「笑いの国」を目指し旅をしていると嘘をつき、ジョイには学校はおろか、病院にも行かせられなかった。長年旅を続けていたことで、ジョイが疲労を隠せずにいた頃、新たに訪れたのは「キャッスルロック」という町だった。目立たずに過ごそうとするアニーだったが、町のならず者エースに目をつけられ、過去の罪を知られてしまう……。
スティーブン・キング原作の「ミザリー」の前日譚。シーズン1の「キャッスルロック」と絡め、若き日のアニーが呪われた町を訪れた事により、心身ともに苛まれていく。
本作で若きアニーをリジー・キャブラン、アニーの愛娘ジョイを演じるのが、エイスグレードで好演を見せたエルシー・フィッシャー。リジーは今までセクシーな役どころが多い印象だったが、本作はそれを微塵も見せず、人を挨拶代わりにアイススプーンで殺すような狂気の女を怪演している。エルシーはエイスグレードでも反抗期真っ只中の娘だったけど、本作ではそれに加え、ただただ気の毒な星のもとに生まれてしまったとしか思えないほどの不運ぶり。
人の善意。それは時として悪意にも変わる。アニーがジョイを思ってやっていたことの全ても、自立しようとしていたジョイにとっては不本意なものだった。双方の気持ちのすれ違いがやがて大きくなり、悲劇へと繋がっていく。本作は思えば、そんな家族同士のすれ違いが紡ぎ合ってしまったことが、町の呪われた記憶を呼び覚ますきっかけであった。
シーズン1が少々期待外れだっただけに、今シーズンはどう話を広げていくのか不安が大きかった。しかし、後半の怒涛の畳み掛けから、物語はシーズン1と思わぬ形で繋がり、極めつけは背筋が凍ると思った、これぞホラーなラスト。今のところ、今年度のベストドラマかもしれない。
「セル」や「スタンド」、「スタンド・バイ・ミー」など、シーズン1と同様に、他のキング作品へのオマージュが所々で見られたのも嬉しい。
未だ謎の多い青年は、果たして「天使」なのかそれとも「悪魔」なのか? シーズン3ではもっと深く掘り下げてほしい。