なっこ

アナウンサーたちの戦争のなっこのネタバレレビュー・内容・結末

アナウンサーたちの戦争(2023年製作のドラマ)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

“夢の機械”それを、いかに用いるか。

良いドラマでした。
あらすじもよく知らないまま見ていたので「結婚しよう」に、ヒロインと同じくらいびっくりした。

言葉には力がある。

この人の言葉なら信じられる。電波にのっていてもそう感じさせられる何かがなくては、多くの人の耳には届かない。主人公の声にはそれがあった。けれど、そんな声は戦争という状況に利用されてしまう。

「お前はのみこまれるな」

そう言ってくれた人。
戦争ドラマを見ながらいつも思うのだが、その状況に飲み込まれないでいられる人なんて本当にいたのだろうか、と。終わった後ならいくらでも言える。そう、きっとね、誰も本音が言えなかったはず。自分の心の声に自分自身でさえも耳を傾けられない、何か同じ方向へと一気に流される。そういう状況への感受性は、危機感は、持ち続けなければいけないなと感じた。だからこそ、苦悩する主人公の姿がきちんと描かれていて良かった。本当のことが言えない、本当のことを知れない、その苦しさがこちらが息苦しくなるほどきちんと描かれていた。

ラジオがこの世に誕生したときの感動や、これで色んなことを知れる、知らせることがてきるんだ、という気持ちをもはや私は想像することすら出来ない。それが当たり前に存在してしまっている時代に生まれたから。けれど、今私の手の中にあるこの小さな機械、スマホが、あるいは携帯電話がピッチが、ノートPCが誕生して、流通して、日常の道具のひとつになっていったことはよく知っている。情報を得ることがこんなにも手軽になる日がくるなんて、夢にも思わなかった。スマホひとつで今では多くのことが出来るようになった。でも、果たしてこの夢の機械で、彼の言う「虫眼鏡で調べ」る行為を私自身ちゃんと出来ているのかは正直自信がない。気が付けば好きなことにだけ囲まれて好きな人の話だけを聞いて自分に都合の良い情報ばかりを見て安心してその範囲から出ることがないのかもしれない。

あの戦争はなんだったのか
それを知っている人はどんどん少なくなっている。語りを直接聞く機会がなくてもせめて一年に一度くらいはこうやって知るきっかけを逃さないようにしたい。
なっこ

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