なっこ

日曜の夜ぐらいは...のなっこのレビュー・感想・評価

日曜の夜ぐらいは...(2023年製作のドラマ)
3.3
幸せになるぞ、と一歩踏み出した瞬間に

もう幸せは始まっているのだと思う。

私はいつもカフェの扉を外側から開ける側の人間だった。
だからこのドラマで初めてドアを内側から開ける方の人生を垣間見ることが出来た。

降りかかる災難を全て受け切って、幸せよりも辛さの方を選ばないと、一歩も動けなくなってしまう…きっと、ヒロインのサチのようなそんな若者が今の日本にはたくさんいる、キラキラしたドラマの主役になり損ねた人たちの実人生をベースに、いまを懸命に生きてる人たちへの応援歌を贈りたいとそんな思いで作られたドラマなんだと思う。
ヒロインたち自身が、私たちは恵まれている、と言っていたように、宝くじに当たるような幸運は誰にでも訪れるわけじゃない。

それでも、
それでもフィクションなのだから、これぐらいの大きな嘘でまずは、一足飛びに問題解決してしまうくらいの力技があっても良いと思う。
そうでないと、あれ程頑なだったヒロインの氷のハートは溶かせなかったに違いない。

家族の問題、いや、家族が問題な時代

核家族化、少子高齢化、家族が密になって近過ぎて、互いに傷つけ合っている。期待し過ぎたり干渉し過ぎたりして適切な距離が取れない。壊れて元に戻れない家族もきっと多い。このドラマの示すように無理に元のかたちに戻さなくて良いと思う。妄想のハッピーエンドで十分だ。
それよりも家族の境界を曖昧にして、近くて非合法な新しい家族になっていくのが私も正解だと思う。「お母さん」と呼べる人、「お帰り」を言ってくれる人が別に他人だって良いじゃないか。

階を変えて縦に連なるのが現代の長屋

みんなが同じ団地に住むっていうのもすごく素敵だった。そんな風に緩やかに連帯して、他愛のないおしゃべりの続く関係が理想的。カフェの開業という夢みたいなことが無かったとしても、彼女たちのそういう連帯は、多くの問題解決につながるひとつの解だと思う。

マイナスをゼロにできるヒロイン

ヒロイン3人が三者三様それぞれに不幸なのが良かった。彼女たちの強さは、辛い夜を乗り越える力があること。現状維持で闘い続ける強さ。逃げてない、誰も。生まれ変わっても「私」を選ぶなんて言葉は、そんな人たちにしか言えない。しょーがない、やるか、と人生を諦めない彼女たちの健気な姿勢にずいぶんと励まされた。

ケ・セラ・セラ、と唱えて私も明日から頑張ろう。
なっこ

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