jun

ダーマーのjunのレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
3.8
1978年から1991年の間にアメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーで連続して17人の男性が殺害される事件が発生。このドラマはその連続殺人犯『ジェフリーダーマー』の生い立ちから歪な親子関係、そして事件の詳細、刑務所での様子まで全10話で描かれています。
有名な事件なので一度は耳にしたことがあるような気がしましたが実際に事件の詳細を記事で読むと思わず絶句するような内容でした。ドラマでは詳細に描かれてはいるものの目を伏せなくなるような生々しい描写の連続という印象ではなかった。事実の通りにはとてもじゃないけど描ききれないと言った方が正しいのかもしれない。




《以下ネタバレあり》










ジェフリーの幼少期を振り返ると父親と母親は仲が悪く家庭内は常に険悪ムード。
母親はうつ病を患っておりジェフリーの妊娠中は1日に薬を26錠も飲むような生活をしていたそう。6歳下の弟が出来たことでさらに悪化し頻繁に癇癪を起こすようになり父親の手にも負えなかったとか。
ある日母親は父親がいない間に弟を連れて家を出ます。"弟だけ"を連れて…。18歳のジェフリーのこの時の孤独感は計り知れないものだったでしょうね。お酒に溺れ始めたのもこの頃からでした。心配した父はジェフリーを祖母の家に預けます。
祖母だけは唯一ジェフリーが心を開いて愛を持って接することができた人物だったようです。
幼少期に動物の死体に興味を示したジェフリーに科学者だった父は良かれと思って解剖の仕方を見せたり取り出した心臓を触らせたりしていました。今まで何にも興味を示さなかった息子が初めて自分に色々と質問してきた事が嬉しくて父親はその好奇心に応えたい一心で色んなことを教えました。
しかしそれが結果として彼の湧き立つ異常な死体への興味をさらに強いものにし殺人後の解体の知識となってしまったのも事実。
だけど何故そうなったのか。
解剖に興味を持った人がみんな殺人を犯すわけではありません。もしかしたら医者になっていた可能性だってあったはず。
またジェフリーには6歳下に弟がいますが彼は至って普通の少年だったようですしその後家庭を持って暮らしていたようなので遺伝的なものとも育った環境とも言い難いわけで…。しかし母親から受けた愛情には明らかな差があったように思いました。
母親に愛されなかった事で誰かに受け入れてもらえない事や拒否されることを極端に恐れるようになり自分に従順な誰かを求めた結果なのかもしれません。

最後は刑務所で清掃中、囚人に鉄アレイで頭を殴られ死亡。奇しくも事件の最初の犠牲者の男性を殺した時と全く同じ方法で息絶えることになったジェフリー。

当たり前ですが一番悪いのはこの猟奇的な事件の犯人ですが地元警察の怠慢や無能さも目に余るものがありました。その背景には有色人種への差別的な考えがあった事が大きく、もし隣人の黒人女性の話を信じて何か行動を起こしていたらきっと14歳の少年は無事親元へ帰れたはず。
その時部屋には別の遺体があったのだから部屋をくまなく調べていたらそれ以降の事件は起こらなかったはずで担当した2人の警察官には強い憤りを覚えました。

内容が内容なので面白いとは言えませんが実際にあった事件を深く知る事ができたので観てよかったです。
jun

jun