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DOC(ドック)あすへのカルテのtubameのレビュー・感想・評価

DOC(ドック)あすへのカルテ(2020年製作のドラマ)
4.9
優秀だが気難しい医師・アンドレアは事件に巻き込まれ12年間の記憶を失ってしまう。周囲の人々と関わるなかで彼が自分の生き方を模索していく、実話を元にしたイタリアの医療ヒューマンドラマ。


毎回患者2人くらいの物語とアンドレアの物語、そして同僚たちの物語が同時進行する群像劇で、基本的にその回のひとつのテーマに沿った1話完結のストーリーとしても成立する作りになっている。あっちこっちで起きる人間ドラマは心情が細やかに描かれており、毎回時間があっという間に感じるほど物語に没入してしまった。ここまで完成度が高い群像劇なかなかないと思う。面白かった。


記憶を失った後のアンドレアは医療への熱意に溢れており、笑顔がチャーミングで魅力的。記憶を失う前の厳めしい顔の彼と別人過ぎて俳優の力量に感嘆させられると共に、何故性格が変わってしまったのか?が徐々に分かる展開はドラマチックで引き込まれた。
イタリアらしくロマンスも多く、アンドレアの元妻アニェーゼ(別れた理由を覚えていない)、恋人のジュリア(付き合っていたことを覚えていない)との複雑な関係性にはヤキモキさせられたし、研修医たちの人間模様も見逃せない。
最初は性格がキツそうに見えた同僚たちも、徐々にそれぞれのバックボーンが見えてくるとどんどん好きになっていく。皆決して完璧じゃなく、ひたむきに生きている人ばかりで、全員が本当に魅力的。特にリッカルドは自然と応援したくなるキャラクターだったから、経験を経て成長した彼が勇気を出して踏み出した最終回は胸が熱くなった。頑張ったね...


そんなヒューマンドラマの一方、記憶を失ったアンドレアを陥れようとする人間が暗躍し、さながらサスペンスのようなハラハラ感もあるのが本作の面白いところ。一言では表現しきれない多面的な魅力が詰まった作品だった。


これだけの要素があって畳めるのか?と思っていたけど、そんな心配は無用だった。人生には辛いことも悲しいこともあるけれど、その経験は無駄にはならないし身を助けてくれることもあると教えてくれた素晴らしい最終回だった。
シーズン2が今から楽しみ!
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