ヤンニョム風チキン

私たちは今日から(原題)のヤンニョム風チキンのレビュー・感想・評価

私たちは今日から(原題)(2022年製作のドラマ)
3.0
〈途中からネタバレあります〉
すごく苦労して観終えました。
2002年のベネズエラのドラマ『Juana la Virgen』を原案にした2014年のアメリカのドラマ『ジェーン・ザ・バージン』のリメイクドラマ。
祖母からの教えで純潔を守ってきたウリ(イムスヒャン)には、2年付き合っている彼氏、カンジェ(シンドンウク)がいた。しかし婦人科検診の際に医師の手違いで人工授精をされてしまう。その精子は化粧品メーカーCEOのラファエル(ソンフン)のもので、離婚協議中の妻が離婚したくないがために黙って人工授精での妊娠を画策し、ラファエルが胃癌治療前に保存していた唯一の凍結精子を勝手に使おうとしていたものだった。医師はすぐに間違いに気づいたが保身のため明かさず、数週間後にウリの妊娠が発覚。事実が判明しラファエルと会ったウリ。実は二人は数年前に旅行先で知り合いウリがファーストキスを交わした相手だった…。さあ、ウリは赤ちゃんをどうする?産むなら誰と育てる?誰と結婚する?が見どころ。ラファエルの妻の浮気相手が殺害され、警官のカンジェが犯人を追うというサスペンス要素も入っています。

で、ここからが感想ですが、まずはキャスト。ミスキャストについて。
ソンフンは素敵。スタイル抜群だし、チョココルネみたいな前髪も良かった。紳士で優しく、せっせとベビーグッズを集めたり、絵本の読み聞かせ録音をする姿も素敵。ピアノの弾き語りやダンスしたりと見たことのないソンフンも見れたのでそこは満足。

問題は…イムスヒャン…。表情筋は動かず目と口しか動いてないから、いっこく堂が手に持っているやつかと思った。ドラマの主題歌はやたらチャカチャカした明るい曲でコメディー色を出そうとしているのに演技にコメディー感がゼロ。『ドクター弁護士』での検事イムスヒャンはずっと険しい顔をしていてドラマに合っていたので、この人にはコメディーが合わないんだと思う。

問題その2、シンドンウク…。まだ主役級の俳優さんでもなく、ソンフンのライバルとしては弱すぎた。39歳なりのほうれい線もある。ソンフンとシンドンウク、どっちを選ぶ!?って迷う余地が一ミリもなかった。

次に脚本について。(ここからネタバレ)
全100話ある『ジェーン・ザ・バージン』を14話にまとめるのは無理があるとしても、わざわざ違う結末にし、Vikiのレビューが炎上する事態に(評点7.6はViki配信の韓ドラの中でも下位3%に入る低さ)。
おそらく、新しい家族の形を提案しようと試みたか、アメリカ版とは違う結末にしようという挑戦だったのかもしれない。だけど、ウリとラファエルは相思相愛になり、ラファエルは悪妻と離婚成立、ウリも彼氏と別れたのだから、ラファエルと結婚し子供を一緒に育てるのが普通の流れなのに、彼氏とヨリを戻して結婚し、結婚式の司会はラファエルにさせ、新婚旅行中の子守もラファエルにさせる。それで「みーんなで育てる、こういう家族の形も幸せ!」と大円団を見せつけられても違和感ありすぎ。最終話の途中までラファエルと結婚したかのように見せておいて、「実はカンジェでした~」という演出も反感を買ったと思う。アメリカ版を見ている人からも見ていない人からも反発され、「反抗期の小学生のような脚本家」とVikiのレビューで言われていたのには妙に納得してしまった。

でも私が一番しんどかったのは(まだ言います、すみません)、特に序盤の、一つしかない凍結精子を勝手に使うだの、違う人に人工授精をして妊娠するだの、これをエンタメとして見ることと自分の倫理観との戦い。ラテンのノリの明るいアメリカ版と違ってこちらはコメディー色を出すのに失敗しているから、これはコメディーなんだと自分に言い聞かせ、倫理観にムギュ~っと蓋をするのに苦労しました。そして現代では、一つしかない凍結精子なら妊娠率の低い人工授精ではなく顕微授精をするし、緊急避妊ピルという、望まない妊娠を防ぐ方法を産婦人科医が知らない訳もないので、20年も前のドラマを医療内容もそのままにリメイクするのは無理があるかと。

色々言いましたが、 肝心の胸キュンシーンもなく、ソンフンじゃなかったら☆1。だけどソンフンが素敵だから☆3。ソンフンが素敵な作品に出ることを私はいつまでも待ってます😭