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未成年裁判のCinemanのレビュー・感想・評価

未成年裁判(2022年製作のドラマ)
4.0
『未成年裁判』
ホン・ジョンチャン監督
〜Netflixシリーズ全10話〜
2022年公開 韓国

鑑賞日 2023年9月9日 Netflix

少年刑事合議部で未成年の犯罪者を裁く女性判事シム・ウンソクは「非行少年を憎んでいる」と公言し、
犯罪を起こした未成年を容赦なく断罪する。
動機がどうであれ被害者にしっかり償わなければならない。
未成年だから許されるということがあってはいけない。
という信念を貫き通す冷徹な女性判事だ。

【概要】
シム・ウンソク(キム・ヘス)はヨンファ地方裁判所の少年刑事合議部に異動になった。
少年法の判事は全国にたった20名しかいない。
その人数で3万人以上の少年を扱わなければならないので何よりもスピード裁判が要求される。
少年保護事件の審判には検察官が出席しないので判事が直接罪を犯した子どもたちに尋問し、保護処分を決定する。
非行少年の処罰が目的ではなく、あくまでも矯正と健全な成長を期待しての判決だ。

しかしウンソクは「なぜ少年保護事件を担当するのか」と問われると、
「嫌悪。私は非行少年を憎んでいます」と鋭い眼差しで答える。
「子供は嘘をつく」「子供は更生なんてできない」「子供は大人をだます」と平然と口にし、
罪を犯した少年たちに少年法上の厳しい刑罰を与えるので“鬼判事”と呼ばれている。
ウンソクが非行少年たちを激しく憎むには過去のある事件が原因となっているのだが・・・。

13歳の中学生ペク・ソンウ(イ・ヨン)が9歳の小学生の男児を殺害して警察に自首した。
着任そうそうのウンソクが担当することになった。
少年を殺害して切断し遺棄するという残虐極まりない犯罪をおこしたソンウは悪びれるどころか、
「14歳未満なら、人を殺しても刑務所には行かないってホント?」とニヤつきながら法廷で大人たちを挑発する。

取り調べの過程で犯行やアリバイ作りに関してキムと交わしたSNSのチャットの記録が決め手となり、
共犯のハン・イェウン(満18歳)の存在が浮上して逮捕された。
ソンウは精神疾患による偶発的な犯行だったと主張したが、2人が緻密な計画を立てて殺害していたことが明らかになり、判決では主犯のイェウンには「犯罪少年」の最高刑である懲役20年、共犯のソンウには2年間の少年院収容が言い渡された。

この事件に続いて、
家庭内暴力、青少年回復センター事件、高校試験漏洩事件、未成年無免許事件などの事件について語られる全10話のシリーズです。

韓国のみならず日本でも問題になっている青少年の犯罪に対して真っ向から切り込んだシリアスなドラマで、
青少年の犯罪をどう捉えたらいいのかを考えさせられる問題作です。

【Trivia & Topics】
*本作の成り立ち。
本作がデビュー作となった脚本家キム・ミンソクが裁判の後も法廷を出た少年たちの人生を見守ることになる少年判事に関心を持ち、
4年余りを費やして少年審判経験のある判事と関係者を取材して脚本を練り上げました。
「少年刑事合議部」というのは現実には存在しない部署です。

*反響。
2022年2月25日から配信されたNetflixオリジナルシリーズでNetflixの世界ランキング・ベスト10に入るほどの高い視聴者数を記録しています。

*モチーフにされた事件。
第一話、二話で語られる小学生殺害事件は2017年に実際に起きた「仁川女児殺人事件」がモチーフとなっています。
高校を中退した当時満16歳の少年が公園で被害者の当時8歳の女児から「スマートフォンを貸してくれないか」と声をかけられた。
キムは「充電が必要だから」と言い、被害者を自宅マンションに連れていき、充電器のケーブルで首を絞め、殺害。被害者の遺体を切断し、一部はゴミ捨て場に、一部はマンション屋上の貯水槽に遺棄し、一部はキムが所持して出歩いた。
夜遅くになっても帰宅しない被害者を心配して両親が警察に通報、警察は近所やエレベーターの監視カメラの映像からキムを容疑者として特定、逮捕された事件だ。

*キム・ヘス。
主役を演じるキム・ヘスは1970年生まれで中学生のときに芸能界デビューし、その後数々の映画賞を受賞している韓国を代表する演技派女優。
圧倒的な存在感と非行少年たちを敵視する冷徹なキャラクターづくりが見事です。

*イ・ヨン。
13歳の中学生ペク・ソンウを演じたイ・ヨンは27歳の新鋭で何と女優さんなんです。
これには驚きました。
彼女が出演している作品で現在配信で観られるのは「D.P.ー脱走兵追跡官ー」だけ。主人公の妹役です。

【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。
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