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ランドスケーパーズ 秘密の庭のねまるのレビュー・感想・評価

ランドスケーパーズ 秘密の庭(2021年製作のドラマ)
3.7
英国アカデミー賞7部門ノミネートの話題作。
監督、編集、音楽、撮影&照明、美術、主演男優、作品。
ラッセル・T・ディヴィス脚本の、"It's a sin"と"Years and Years"の間に観たのは私の失敗。ドラマの見方、頭の使い方が違いすぎる。

ちなみに私はこちらの方が受け取るのが苦手。
あれは?あれは?あれは?何を表すの。アート要素が濃いのと、実験的な演劇要素を取り入れているのと、知識がないから気付けない。
ただ、すごいのは分かる。

なによりも映像が全カット、コレクションしたくなるくらい凝っていて、隅々まで美しい。
ウェス・アンダーソンにも近い、ワンカットへのこだわり。それに加えて、監督が俳優だからか、演技を見せたいところでは顔面のドアップを躊躇しない。いい意味で演劇っぽいワンシチュエーション間と、見せたいアップを混在させている。
ウィル・シャープ恐るべし。

メインキャストはほぼオリヴィア・コールマンと、デヴィッド・シューリスの2人のみ。
この2人の世界。
犯罪を描いたドラマはあまたあれど、被疑者の思考を実写化しようとした作品はないのではないか。

この世界とは別の世界にいる、そこに逃げるしかなかったスーザンの、過去と今と映画の中の世界がごっちゃになった思考。
色使いは極端に、赤と緑が印象的。
過去、今、映画の中を行き来する中で、どこにも限らず、色が出てくる。
多分、信号と同じで、スーザンにとって安心を感じる場所は緑、危険な場所は赤が使われるんだと思う。
はじめはモノクロが映画の中で、現実に色がついていたのに、後半では逆転する。

音楽は監督の弟アーサー・シャープ
7部門へのノミネートのうち唯一のBAFTA受賞。
ロマンチックでミステリアスなメロディが印象的。

脚本は、オリヴィア・コールマンの夫のエド・シンクレアだそうだが、ちょこちょこクスッと笑えるやりとりが登場するのはウィル・シャープっぽいなって。
カメラが置いたままのセットがそのまま本編に使われる、セット間の移動のシーンが映ってるというのも先鋭的で、現実と自分の世界の境がわからなくなっていることを表しているようにも見える。

それでもスーザンとエドワードを、否定的には見れない。決めつけと上から目線な警察にも高圧的だと感じてしまうし、スーザンに寄り添おうとする弁護士に親しみを感じた。
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