なっこ

長歌行のなっこのレビュー・感想・評価

長歌行(2021年製作のドラマ)
3.0
若者群像劇。

たまに謎にアニメシーン切り替わるところがあって、予算の関係なのかな…戦闘シーンとかが多いし、どんな基準でアニメを採用してるのかよく分からないけれど、そこをスルー出来れば楽しめる作品。

なんだか若いなぁと思いながら見てしまう、その無鉄砲さとか、聞き分けのなさとか、一途さというか、でも経験を通して成長していく。その中で大切な人たちに出会っていく。2組のカップルの恋物語も見どころ。

まるで姉妹のように育った従姉妹同士ではあるが、ひとりは男勝りで武術に長けていて、もうひとりは引っ込み思案で内向的、ダブルヒロインと言っても良いくらいどちらにも肩入れした物語になっていた。以前だったら、男装の麗人で男達と伍して戦う勇ましいヒロインに惹かれたが、この物語ではなぜかそれほど惹かれず。どこかで、これは少年の成長譚の焼き増しのように見えてしまい魅力的に映らなかった。もうひとりの内向的な少女がたったひとりで放浪することになり、ひもじさや孤独と戦いながら洛陽を目指す中で成長していく過程の方に惹かれた。家や身分を失い、そのままの自分のみが頼りとなる、そういうことがテーマなのかな。家柄や組織、部族や国からさえもはぐれてひとりぼっちになる。帰る場所を失う。そんな自分に何が出来るのか、何をなすべきなのか、そういった葛藤を抱えた物語だった。

男たちはより複雑で繊細なやや新しさを感じるキャラクターが多かった。常に争いの中にあり、強さを見せつけ合う関係にありながら、振り上げた拳を静かにおろすことができる。怒りや正義にのみこまれない、男らしさや強さから降りることの出来る男。特に、四角関係にあってこれといって成長したようにも見受けられない魏叔玉だが、彼のいろんな人を思い遣って身動きが取れなくなる様子は、非常に現実的な葛藤を抱えていて共感できるキャラクターだなと最初から好感を持って見ていた。

太平の世を自由に生きる、誰もがそれを目指す、けれど現実には争いばかりが繰り返されている。

物語は終わり、この後唐は栄えていくのに、素直にめでたしめでたしとは思えない。平穏は束の間だと思ってしまうのは、世界情勢が不安定ないまの現実のせいなのかもしれない。
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