こたつむり

SPECサーガ完結編 SICK'S 恕乃抄 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.5
★ 空の果てに辿り着いた 銀色の味
  もう一度やり直せる そんな希望

堤幸彦監督は天才だと思います。
それはメイキング映像を見れば明瞭。まるで魔法のような“特殊な演出”は凡人では計り知れない領域ですからね。監督さんには何が視えているのでしょうか。

そして、その鋭敏なセンスは周囲にも影響を及ぼします。特に最近のコメディ映画からは顕著に感じる次第。個人的には肩が下がるんですけどね…これは堤幸彦監督だから面白いのであって、役者さんに頼り切った演出とは次元が違うのです。福(以下略

だからねえ。本作の演出もねえ。
真似されるんじゃないかと考えてしまうと…微妙なんですよねえ。

特にテロップを多用した演出はマンガ的表現と言うよりも、バラエティ番組を観ているかのよう。しかも、最初は抵抗を感じていたのに、次第に慣れてしまう自分が嫌な感じ。あー。ユルいわあ。

あと、ドラマは立ち上がりが難しい分野。
しかも、本作は『ケイゾク』と『SPEC』を下敷きにしていますからね。どうしても“焼き直し”感を抱くと視点が偏ってしまうのです。

餃子がタイヤキになっただけ、とか。
習字の代わりに料理を作るのか、とか。
前作と比較するのは誰にも益がない話。

ゆえに大切なのは見守る気持ち。
最初は四球を連発しますが、肩が温まればバンバンと三振を取るかもしれない…そう考えて臨んだ方が良いのでしょう。

そして、そう考えて臨んだ第三話。
なるほど。これは面白くなってきましたよ。やはり、世の中に同じ人間が存在しないように、彼らには彼らである“意味”があるのですね。ただ、惜しむべくは木村文乃さんの魅力が完全に引き出せていないこと。正直なところ、メイキング映像のほうが素敵に見えてしまったのは…これは次章に持ち越した課題ですかね。

まあ、そんなわけで。
コミカルな筆致と前作までの印象で先入観に左右される作品。思うに『ケイゾク』や『SPEC』が好きな人に向けたファンサービスと捉えたほうが良いのでしょう。それはそれでアリだと思います。地上波じゃないし。
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