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インベスティゲーションのしおりのレビュー・感想・評価

インベスティゲーション(2020年製作のドラマ)
4.5
デンマークで実際に起こった潜水艦内での殺人事件が題材。
タイトル通り、事件発生からの捜査を時系列にそってひたすら描く。
ドラマ内では司法からのアプローチを全く描かないため
被疑者は一切登場せず、供述内容がわかるのは検事や刑事からの伝聞セリフのみ。
主人公のベテラン刑事チームと海洋捜査班の奮闘ぶりが淡々と北欧ノワール感満載で描かれる。

私たち視聴者はキツいと思ったら視聴をやめられる。
4話まで遺体が見つからないため、なかなかストーリーも進展しない。
でも遺族と捜査チームは違う。やめられない。
そのストラグルがそれはそれは忠実に映し出されている作品。

主人公の真面目なおじさん刑事は
すごく度の強いメガネをかけている。
目が飛び出してきそうなくらいの強い度数のメガネが
小道具として、彼の執念や世の中への観察眼をとても上手く現してるなぁと思った。
彼には妊娠中の娘がいて、事件にのめり込むあまり関係性が悪くなるんだけど
この2人の確執は、父娘という関係性だけでなく、立場が違うというか
当事者とそれ以外、というような隔たる世界の分かり合えなさに対するメタファーな感じがした。
その場にいる人しか、状況をわかってる人しか、分かり合えないというバウンダリーのメタファー。
それと、娘の妊娠をどう喜んでいいのかうまく表現できないのは
この世の中がどれだけ残酷か痛いほど知っているからだし、
同時に父娘関係に確執が生じてしまうほどひたすら仕事にのめり込むのは、孫が生まれてくる世の中を少しでもマシにしたいからかな、ともとれる。
どちらにせよ、真面目で愛が溢れるからこその確執で、それがまた切なかった。

殺めるのも人間。悼むのも人間。
ラストに字幕と写真で事件の顛末が説明され、実際に起きた事件なんだなと故人を偲ぶ思いがひたすら湧き上がる。

PS.スウェーデンの犬グッジョブ🐕
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