梅ちゃん

さまよう刃の梅ちゃんのレビュー・感想・評価

さまよう刃(2021年製作のドラマ)
4.5
最愛の一人娘を少年たちに惨たらしく殺され、復讐の鬼と化したシングルファザーによる魂の追跡劇。

原作は東野圭吾。
2009年に日本で映画化。
2014年に韓国で映画化。
2021年に日本でドラマ化。👈コレ
60分×6話。

監督は片山慎三。〈岬の兄妹〉〈さがす〉など、人間心理のダークサイドを湿度高く描写するスキルがバカ高い。
長らく韓国映画の現場でキャリアを積んだことを考えれば、このジャンルを主戦場とするのは必然か。

序盤で父親が目撃するDVDに収められた娘の凌辱映像は、正直見るに堪えない程の胸糞。
どうしたら人が嫌な気持ちになるのかを知り尽くした、まさに職人業。

これが胸糞であればあるほど、観る側の感情は父親の感情に同化し、憎悪と怒りを伴って、物語に没入してゆく。

そうなると、この作品のテーマである被害者遺族による報復、私刑の是非については、どうしても容認側の立場にならざるを得ない。

しかしながらこの物語、主犯格の少年について、不作法な箸の持ち方や、虐待を疑われる小さな少年に同情的な行動をとる描写を挟むことで、彼がこうならざるを得なかった生い立ちをうっすらと匂わせてくるからタチ悪い。

彼を100%の絶対悪として描かないことで、見る者の感情には若干の迷いが生まれ、この物語の後味の悪さを加速させる。本当に非情な構造のドラマだ。

少年犯罪や被害者遺族の感情を抉る様に描いたドラマでしたが、ラストで待ち受ける真実は、これらの問題が大いなる矛盾を孕む、一筋縄では行かない物であることを無慈悲に示唆する。

日本版映画、韓国版映画を鑑賞済みの為、長らくマイリストで放置していたタイトルでしたが、演出の妙で新鮮かつ興味深く鑑賞出来ました。
ホントに観て良かったと思いました。

Annaさん、ありがとう😌🙏



キャストについての蛇足🐍👣



主演の父親役、竹野内豊さんは、2009年の映画版では刑事役を務める。
普段の飄々として柔らかな雰囲気から想像もつかない様な、劇中で見せる絶望、憤怒の表情は凄まじかった。

娘役の河合優実さんは、迫真の演技で作品の世界観にただならぬリアリティを付与して いる。
〈サマーフィルムにのって〉〈佐々木、イン、マイマイン〉〈家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった〉〈愛なのに〉など、メジャー作品での好演が続きますが、これから更にメキメキと頭角を現して行くのでしょう。心の底から楽しみです。
なお、〈愛妻物語〉の高速白目うどん打ちJKは最高に笑いました。
主演作〈少女は卒業しない〉、早く観よっと。