ジェイコブ

川のほとりでのジェイコブのレビュー・感想・評価

川のほとりで(2021年製作のドラマ)
3.6
多摩川の河川敷で暮らす二人のホームレス、トシちゃんとBB。二人は誰に気兼ねすることなく、自由気ままに人生を過ごしていた。二人の元には、毎日のように様々な人が訪れる。そんな二人の暮らす住まいの近くには、鈴のついた墓石が立っている。それは河川敷に暮らす人々の伝説のホームレス聖の墓である……。
WOWOWオリジナルドラマ。河原で暮らすホームレスのほのぼのとした生活を、ユーモアを交えながら描いている。面白いのはコメディとはいえ、ホームレス間でも経済格差があったり、乞食ではなく、自活するホームレスであるとプライドを持っている点など、ドキュメンタリーなどで特集されたようなホームレスの姿が描かれている事だ。彼らは気候の変動や病気、飢餓などが日常的な問題であり、一般人よりも死がより身近な存在である。彼らの中には元々経済的に裕福であった人や、社会的地位もいたが、様々な事情により社会の仕組みから外れてしまった。彼らはお互いに過去は探らないという暗黙の了解の中、、来る者拒まず去るもの追わず、一日一日を懸命に生きている。その姿は、人を騙して金を稼ぐ輩や他人を踏みにじって生きる権力者よりも人間らしく、時に美しく映る。それはまるで、ブルーハーツの「リンダリンダ」に出てくるような、ありのままの人間の姿なのかもしれない。
個性豊かなホームレス達を、岸部一徳やベンガル、小泉今日子に倍賞美津子と、これまたかなり豪華キャストで演じている。
ラストのほのぼのとした河原でのワンシーンで、トシが空き缶の値段が下がったと不穏な一言を呟いた。普通に暮らしていれば、聞き流してしまうような事でも、彼らからすれば死活問題だ。心中穏やかではないはずの二人であるが、物語はほのぼのとした雰囲気を残したまま、終わりを告げる。それは、明日のことなんてだれにも分からないから、悪い事は考えず、今日を精一杯生きたほうがいいと伝えるかのように。
人生に疲れた人にオススメしたいドラマ。