塔の上のカバンツェル

キャシアン・アンドーの塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

キャシアン・アンドー(2022年製作のドラマ)
3.9
ディズニー傘下で作成された「オビワン」や「マンダロリアン」がコカコーラやレモンソーダのような炭酸飲料だとしたら、本作は日本茶のような仄かな深み、滲み出る旨味を楽しむシリーズだったなと〜。

スピンオフを大まかにジャンル分けしてみると、以下に分類できると思う。

ローグワン:戦争モノ
ハンソロ:西部劇
マンダロリアン:子連れ狼
ボバフェット:マフィア

(オビワンはサーガ寄りのストーリーテリングなのでちょっと毛色が違うし)


そして本作「アンドー」は、個人的にはスパイ大作戦を想像してたけど、蓋を開けてみたらWW2のレジスタンスやパルチザンモノだった。
そこに「大脱走」や「荒鷲の要塞」のWW2ムービーのエッセンスが加えらているかなと。
つまるところ、ナチスやソ連の占領下の圧政で抵抗する人々の話なんですわね。

この下地を元に作ってるから、ド派手なアクションが無くても、その地味さが胆力となって、帝国の圧倒的な絶望感とディストピア感をより深めていると。

ディストピア風味と言えば、ファンダムでも盛り上がってたけどもルーカス監督作品の「THX1138」引用もあった。


惑星の造形は素晴らしい。
これはロケハンや背景美術さん達のお仕事の成果。

ディズニー傘下になってから、「マンダロリアン」は言うに及ばず素晴らしかったけども、「オビワン」は美術関連は結構手抜きだったのと、シークエルはep8の塩の惑星は実は好みだったりするんだけど、基本的にはガッカリ。

対して本作は4k映像に耐えうる自然美なショットの数々と、旧トリロジーのDNAを受け継いだ、地球の風景との地続き感とSF要素のマッチは良かったなぁ〜と。
アルダー二の流星群は、シリーズでも類を見ない美しさだった。

ギャラクティック・サラリーマンの大企業の社畜風景が見られるとも思ってなかった。

エイリアン種族は一瞬出てきたマズナカルタと「ハンソロ」の猿型エイリアンのような造形とかはクオリティ高かった。
ただ、エイリアンの出演シーンが少ないのは残念だった…。
帝国の政策でエイリアン種は差別されてるのでその辺仕方ないのはあるかもだけども。

「マンダロリアン」が見たことないスターウォーズの拡張世界のワクワクを広げてくれたのだとしたら、本作はそこに生きる者たちが"生活している"地続きの生活感を楽しめた。


キャラクターに関しては、スター性はないものの、演技力高すぎ夫達が集まっているので、演技の緊張感が他シリーズとは段違いになっているのは間違いない。

名優ステランステルガルドは、HBO傑作ドラマ「チェルノブイリ」で本当に好きな俳優の一人になった役者だけども、本作では彼の存在感というか、画を引っ張る力は流石の貫禄かと。
帝国に反旗を翻すにあたり、汚いことにも手を染めるも厭わないながら、覚悟が決まりきっている人物背景を感じさせる演技の深み。

対してモンマスマは理想と現実に翻弄されつつも、かなり早い段階で覚悟を決めてしまうので、武装闘争パートのアンドー達やルーセン、政治闘争に奔走するマスマパートも決して中弛みしなくて良かった。
このマスマが、後の反乱軍リーダーとして出てくる納得感。
シーズン2では更に修羅の道を進んでいくだろうか。

一方アンドーは、ほぼチンピラのようなキャラで彼の周囲が反乱の炎に燃え上がってしまうその様に逃げ惑っている。
彼が大義に身を投じるまでの過程を凄い丁寧に描いた分けだけども、反乱軍の体すらない創世記の反乱軍に加わっているとすると、かなり初期メンバーなのは驚いた。

そして、アンディサーキス。
本シリーズで特に面白い監獄編ターンで、インパクトを残していった。
サーキス含めて顛末の余韻も逸脱だったなと。

最終話の暴動もスターウォーズで大規模肉弾戦は珍しいとも言えるので、市民レベルの暴動がどうやって大規模正規戦までに至る反乱軍に繋がっていくのか。

あと、クローントルーパの一糸乱れぬ隊列(フーーーー!!)や、スペースゲシュタポのISB、タイファイターの活躍やキャントウェル級巡視船など、帝国の活躍も目覚ましく、目に嬉しい。


1〜3話はかなり退屈にすら思えたけども、5話以降見所が増えてエンジンがかかって愉しさが増えたので、万人にオススメは出来ないのが口惜しいところ。
若者の興味の持続が15秒が限界と言われるTikTok時代にあって、挑戦的な作品作りなのは間違いない。
ディズニープラスの視聴数では、「オビワン」の半分にも満たないとも言われてるので、シーズン2への投資をディズニーは尻込みしないで欲しい。
絶対にシーズン2が観たい。


ラストのオマケ映像ではまさかのサプライズ、なんか変な声出た笑
観た人が仄かに笑う伏線回収だけど、最終的に「ローグワン」でクレニックが報いを受けたように、アンドーにも因果の輪が閉じることになるの、結構重くのしかかるものがある。