ウシュアイア

響け!ユーフォニアムのウシュアイアのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム(2015年製作のアニメ)
3.3
中学校でただ何となく吹奏楽部のユーフォニアムで活動してきた黄前久美子は高校で新たな友人や幼馴染とともに吹奏楽部に入部すると、同じ中学で部活へのスタンスの違いから気まずい思いをしている吹奏楽に熱い想いをもつ高坂麗奈と再会し、部の先輩や同期と活動していくうちに吹奏楽への想いを熱くしていく青春ドラマ。

京アニ制作ということで、アニメーションの表現技術は素晴らしい。ストーリーも努力・友情・勝利の物語としても王道で、話に乗れれば悪くない。

しかし、これまで観てきた京アニおよび京アニ(出身)系のクリエーターがつくる作品のストーリーは決定的に合わず、多くの人が絶賛する一方で、例外にならなかった。

ストーリーとしては努力・友情・勝利の部活動青春ストーリーなので、普遍性のある話のように思えるが、これを吹奏楽部でやることにどうも乗れなかった。

そもそも音楽は芸術という自己表現であるため、勝敗が大きな要素になるスポーツとは違う。コンクールなどで競うことも否定はしないが、本作ではコンクールでの入賞が目的になっており、音楽を通じて何を伝えたいのか、という芸術すなわち自己表現の要素が完全に置き去りにされている。芸術を扱った『ましろのおと』や『ブルーピリオド』ではコンクールや受験といった要素はあるものの、自己表現としての芸術について向き合っているが、この作品ではそれが登場人物から感じられない。

そもそも現実のコンクール至上主義的になっている学校の合唱部が吹奏楽部が悪いのであって、題材の問題であるとともに現実の問題だ。むしろそういうコンクール至上主義的音楽系部活動批判の作品なら大いに乗りたい。

京アニはこれだけ女性の感性に寄り添った作品が作れるのであれば、女子のスポーツを舞台に努力・友情・勝利の方程式に乗っかった作品をつくればもっと広い支持を得て万人受けする作品が生み出されると思う。
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