カニ組長

山田くんとLv999の恋をするのカニ組長のレビュー・感想・評価

山田くんとLv999の恋をする(2023年製作のアニメ)
4.8
 人間関係にはギャップが付きものである。第一印象が無愛想で冷たかったり、絡みがだるくだらしないと感じていたとしても、ふとした瞬間に不器用な優しさが見えたり、太陽の様に純粋で明るい笑顔を向けられたりすると、なんだかドキッとしてしまうもの。
 それがネット上の関係ならば、尚更ギャップは大きくなってくる。気の合う女友達だと思っていたのが実はネカマの男だったり、良い人ならいいが、中には常識の通じないヤバイやつもいて。
 そんな現実・ネットで時たま生じる、人間関係のギャップをこの作品は意図して描いている。具体的に言えば、キャラクターの第一印象をあえて悪く見えるように描いているのだ。
 主人公の茜は彼氏に浮気され振られたことを加味しても、初対面の男子高校生を飲み屋に連れ込み、散々愚痴を聞かせた挙句、泥酔して吐いて家に泊めて貰うといういくらなんでもなダメ女っぷりを発揮するし、レベル999の山田くんだって序盤は無関心通り越して人間嫌いなのかってレベルの塩対応をかましてくる。それでも不愉快に感じないのは、コメディタッチな作風の影響もあるだろうが、作中のキャラクター達がダメな部分も一個人の個性として受け入れているからだろう。
 人間関係にはギャップが付きもの、つまり先にダメな部分を受け入れると、良い部分がより魅力的に写る。その効果をこの作品は存分に活かしていると感じる。
 かなり抜けたところもあるが、芯があってポジティブな茜と、冷たく見えて実は不器用なだけの優しい青年・山田、そしてそれを取り巻く様々な友人達、欠点も愛らしい彼らの恋愛模様は一見の価値がある。是非、最後まで見て山田くんに悶絶してほしい。
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