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パラダイス警察 シーズン1のshunのレビュー・感想・評価

パラダイス警察 シーズン1(2018年製作のアニメ)
4.6
ネトフリのおすすめに出てきたので観始めた。最高。
毎回大量の下ネタとグロすぎる過激描写でクソ警察署の騒動を描くコメディ・アニメ。

ほんとくだらないんだけど鋭い風刺が効いててアメリカ社会を全方位から攻撃するスタイルが毎度秀逸で飽きない。

一番上手いなと思ったのは3話。
黒人警察官が防弾鏡に映った自分を悪党だと思って撃っちゃって跳ね返った弾で負傷する。するとそれががニュースになり「罪なき黒人が警察に撃たれた!」「警察はレイシストだ!」って報じられるの面白すぎる。
「自分で自分を間違えて撃った」と何度言ってもメディアや世間は聞く耳を持たず警察vs黒人の対立構造を作りあげ、次第に警察擁護派とBLM運動の衝突で国中で論争が巻き起こることに。

次第にその警察官は悪党と警察の二重人格になるまで追い詰められてしまう。対立ばかりが大きくなって当事者が蔑ろにされていく社会を痛烈に皮肉っていてほんとよくできた脚本だった。
発端はものすごく馬鹿馬鹿しいことなのにメディアの怖さや人々の無知がもたらす被害を扱っている。この話に限らず警察署が舞台なだけあってやはりBLM運動や警察による暴力が描かれることが多くて興味深い。

登場するキャラもみんな個性的でぶっ飛んでる。
まず主人公ケビンは18歳で父親が警察署長。幼い頃から警察に憧れてて5歳の頃に父親の銃で遊んでたら間違えて父親のタマを二個とも撃ち抜いてしまった経験がある。彼が夢を叶えて警察になるとこから話は始まる。なんてったって警察は嫌われてるしお母さんが市長で父親が署長だから訓練なんてせずに簡単になれちゃう。

同僚も曲者揃い
警察犬のブレットはお酒と麻薬が大好きで押収したクスリを倉庫でいつも隠れて吸ってる。こいつは毎回面白い。
そして唯一の女性警官のジーナ。ものすごく暴力的で悪党が可哀想になるくらい暴れるんだけどこの人がいないと警察署は回らない。グロ描写は相当強いです。血の飛び方や内臓の感じが妙にリアルで気持ち悪い。チーム唯一の女性が一番有能でクズたちを破壊してくのはカッコいんだけどね。
あとはさっき書いた黒人警察のジェラルド・フィッツジェラルド。まあ唯一の黒人なんで人種差別ネタ担当でやっぱ3話は良かった。
そしておじいさんのホプソン。ほんとこいつは役に立たない爺さんな上に差別的なことばっかり言うしゲイなのか心が女性なのか分からんけど気持ち悪い下ネタ担当。「昨日は有色人種の悪党の車を止めてやった」って言ったらそれが同僚のジェラルドだったって話面白かった。
最後は病的肥満のダスティ。こいつも面白い。太ってて銃弾は効かないしバカだから何言われても平気な感じ。

みんなどうして警察になれたんだって思うけどこの濃いメンツが引き起こす騒動が毎度面白いしただの会話でも笑える。

前述した人種差別ネタはもちろんだけど宗教と権力のつながりや薬物問題などあらゆる社会問題を扱ってて感心する。

5話では「このボードゲームやったら息子がゲイになった!このゲームは神への冒涜だからこの町から無くせ!」って言った教会の人が実は同性婚してたってオチが面白かった。

全編通じて一番笑ったのは2話。隣町との境に死体があって証拠も半分(=下半身)しかもらえず、ひたすらケツの写真を配って身元特定しようと事情聴取する。もうくだらなすぎて腹が捩れた。

4話も印象に残ってる。市長が息子のケビンに買ったハイテクパトカーのカーラ。ケビンとカーラが恋に落ちるんだけど次第にどんどんカーラが嫉妬深くなって暴走する話。AIとの恋愛話は色んな作品で見てきたけど車とヤるのは初めて。とにかく終盤は怖かった。
このカーラを購入した経緯も面白い。息子にハイテク自動車を買ってあげたい市長が盲目の子たちの学校建設費削ってカーラを買う。目が見えないことをいいことに彼らをガラクタばかりの広場に座らせて「今日からここがあなたたちの学校よ」って酷すぎる…
この後の話でもまたお金が必要になった時にその子たちをゴミ袋に入れて振って「ジェットコースター楽しい?」って言って修学旅行費を横領。市長がやることとは思えない。

色々書きましたがさすがネトフリって感じのやりたい放題なアニメでした。1話完結型だけどしっかりシーズン通じて話の筋が通ってて最終話で伏線が回収される感じだったのも良かった。シーズン2が気になる終わり方。
とにかくくだらないけど皮肉、風刺、ブラックジョーク満載で毎回楽しめた。おふざけだけじゃないからいいよなあ。日本のアニメでもこういうのないかなって探してるけどなかなか見つからない。そもそもここまでの過激描写ができないだろうし、こう社会に切り込む感じの作品が日本でももっと増えればなといつも思う。
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