クドゥー

リコリス・リコイルのクドゥーのレビュー・感想・評価

リコリス・リコイル(2022年製作のアニメ)
5.0
『悲しき思い出の引き金は、生きるための反動となる』

犯罪を未然に防ぐ秘密組織に属する二人の美少女が絆を深めていく姿を描く足立慎吾監督作品は、あらすじから予測可能な面白さを総合芸術としてのアニメーションが遥かに飛び越え、この時代の少年たちはリコリコ世代と呼ばれるであろうオールタイムベスト級の傑作。

30分アニメとしての緩急とワンクールアニメとしての引力を極めたシリーズ構成が見事であり、原作モノでは味わえないどう転ぶのかとどう魅せるのかのWパンチでノックアウトし、映像も音響も見どころ聴きどころしかなくて今期でなければ一週間本作だけ観ている。

彼女たちが笑顔でいることが自分の周りにいる人たちの笑顔と同じぐらい尊い絵の芝居に加えて、二人の芝居に黒沢ともよインスパイアみがあることで実生活に入ってくる度が大変で、とにかく最後まで幸せでいてほしいとクライマックスの数週間は気が気じゃなかった。

2022.09.23
NETFLIX日本語字幕

2022.12.24〜2023.01.05
NETFLIX

第1話「Easy dose it」
→世界観を提示しつつ美少女二人が流れるようにバディを組む初回。「ありすぎますね」が視聴者の思いを代弁するまでノンストップで、依頼人を囮にするアクションの方向性にセンスの塊を見出す。僕にはカバネリと並ぶオリジナルアニメ史上最高の第1話です。

第2話「The more the merrier」
→依頼人警護によりバディを深めると見せかけたチームミッション回。クライマックスまでそれを感じさせない構成力が素晴らしく、キャラクターと視聴者の揺らぎが一致するのはとんでもないこと。第1話でEDを流しているからOPにカタルシスすら存在する。

第3話「More haste, less speed」
→例のシーンで多くの人が感動し救われた人もいるかもしれない神回。素晴らしいのはたきなの反応がきちんと描かれていることであり、声や表情のグラデーションが本作の生っぽさの秘訣であると思う。最終的には実力で全部解決する脳筋らしさも僕にはベスト。

第4話「Nothing seek, nothing find」
→視聴後僕に円盤全巻予約させた伝説のパンツ回もといデート回。後から色々文句を言われたしパンツじゃない方が良かったかもだが、少しずつ感情表現が豊かになるたきなよりも尊いものはない。やはりこの作品が最大のポテンシャルを発揮するのは日常回である。

第5話「So far, so good」
→依頼にかこつけて墨田区及びその周辺の魅力をお届けする聖地回。結局は銃撃戦になるところを含め様式美がきっちりと描かれるが、掌の上で踊らされてるようでもある暗躍の見せ方が上手い。僕には天秤が片方に傾いているようには見えないし良い塩梅だと思う。

第6話「Opposites attract」
→全僕が待ち望んだ同棲からかつてないピンチが訪れるギャップ回。彼女たちの聖域めいた日常を見せすぎないという美学に魅せられ、一話の中で目まぐるしく変わるテイストこそがリコリコ。ここまでならエンタメとして本当に非の打ち所がない作品と言えるだろう。

第7話「Time will tell」
→未成年は立入禁止のバーで愛憎劇が展開されるという大人の時間回。初見時は衣装に目がいってしまい内容がほとんど頭に入らんが、計画外の接触のスリルを敵役の視点で魅せるのが絶妙。真摯にキャラと向き合うことでポリコレなんてものは勝手についつくる。

第8話「Anothnr day, another dollar」
→最終章の前ながら主演女優に一番好きと言わせしめたバランス回。お仕事コメディのAパートから心臓の縮むアイキャッチへの流れに、敵と談笑する洋画感って何でこんなに素敵なんでしょう。今回のラストからとにかく平穏無事に終わるのを祈る日々が始まった。

第9話「What's done is done」
→嫌な予感が確信に変わったらちさたきの尊さが極まるゴッデス回。フィクションの揺らぎを超える死の恐怖をはっきりと認識させながら、ふとした瞬間の笑顔だけは奪われないとまだ遠くない日を想う。このラストシーンでEDをカットインさせる演出はセンスの暴力。

第10話「Repay evil with evil」
→いよいよ最終章へも突入したスケールを感じながらも親子愛回。例によってカバネリの美馬様を彷彿とさせる革命に不安が過ぎるも、世間様の乖離に対して僕は好きなんだろうなと思うことを確信する。泣けるシーンほど不意打ちなのがこの作品のすごいところである。

第11話「Diamond cut diamond」
→ジャックされてしまった電波塔を縦横無尽に駆け回るアクション回。ちさたきの絡みがないという視聴者には試練のような時間だが、だからこそどんなカタルシスを与えくれるのか想像の上をゆくことを願う。ED入りは毎回神がかる作品だが今回はその中でも最強。

第12話「Nature versus Nurture」
→最終回に向けて作中最強主人公の感情に触れる怒涛のセミファイナル回。「心臓が逃げる!」が屈指の名台詞であることは自明だが、たきなさんの絵の芝居というか顔つきが全体的にヤバ過ぎる。色々と詰めが甘いけれど僕には愛が詰まっているから大好きなんだ。

第13話「Recoil of Lycoris」
→ほんの少しの寂寥を残しながらも万感の思いで迎える大団円最終回。違ったかたちを選んだ方が爪痕を残せたかもしれないけれど、そうならなくて良かったと思えるぐらいに作品が大きくなってしまった。僕には死ぬまできっと思春期に刺さる作品が最悪なのだと思う。
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