「犬王」と同じく古川日出男氏が原作、サイエンスSARUが制作のテレビアニメ。
琵琶法師の少女びわを語り部に、平家物語を新たな視点で描く作品。
独特のリズム感のあるアニメーション、音楽が心地よかった。
幼少期に読んだ小泉八雲の耳なし芳一、手塚治虫の火の鳥で初めて平家を知った。教科書で読んだ敦盛の最期なども印象深い。
平家物語は過去に起きた滅びの悲劇の象徴で、たいがい傍観者としてそれを見つめる話だと思えた。
今作はびわが平家に入り込み、家族に近いほどの立場で交流を深め彼らに寄り添っていく。びわは語り部であり、山田監督の分身とも視聴者の分身とも言える。
父を奪われ母を失ったびわは、平家に対し複雑な情を抱きながら日々を共に過ごし、物語の終焉は壇ノ浦の戦いに至る。
未来を見通す力があっても運命は変えられない。それならあるがままを見届けようとするびわ。
戦いや諍いで命が失われていく歴史は繰り返され教科書に書かれてもたった数行にしかならない。
今作はファンタジーの側面も強いが、歴史の中に人々の営みがあって今に繋がっていることを、キャラクターそれぞれの半生を通して考えさせられる。
現実を見て知って苦しんでいる人へ直接手を差し伸べることが難しくても、祈りや想いを馳せる。
傍観者にしかなれなくても、それはきっと無意味ではないよなと思う。
穏やかで優しすぎた徳子が芯の強い女性になっていく描かれ方や、天邪鬼で生意気ながら、冷静に自分たちの行く末を見極めていた終盤の資盛が好きだったなぁ。
もう少し細部を描いてほしいところもあったものの、爽やかな印象を持って視聴を終えられた。
