ウシュアイア

天空戦記シュラトのウシュアイアのレビュー・感想・評価

天空戦記シュラト(1989年製作のアニメ)
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インド密教の世界観の天空界を舞台に、調和神ヴィシュヌを柱とするデーヴァ神軍と破壊神シヴァを柱とするアスラ神軍との戦いを描いた物語。神甲冑(シャクティ)という鎧を身をまとって戦う。(※神甲冑は普段はヴェーダと呼ばれるコンパクトな像の形に収められており、マントラ(真言)を唱えると神甲冑に身を包まれて戦闘態勢になる。)

ストーリーとしては、拳法のよきライバルで親友同士の修羅人と凱が天空界にそれぞれ修羅王シュラトと夜叉王ガイのテーヴァ神軍の八武衆の戦士として転生(現在のなろう系の概念では転移)するところからはじまり、前半はテーヴァ神軍を裏切りヴィシュヌを石化させて内乱を引き起こした雷帝インドラとの戦い、後半は本格的なアスラ神軍の侵攻を受け、破壊神シヴァとの戦いという展開にななっている。

天空界に転生したシュラトとともに転生したガイは、転生の途中でアスラ神族の影響を受けて残忍な性格となり、アスラ神軍側についてしまい、全編にわたってシュラトと対立することになる。

前半ではインドラの謀反により、ビシュヌを石化させた濡れ衣をシュラトたちに被せ、シュラト(CV関俊彦)、天王ヒュウガ(CV堀内賢雄)、竜王リョウマ(CV山寺宏一)、迦楼羅王レイガ(CV井上和彦)のシュラト側と夜叉王ガイ(CV子安武人)比婆王ダン(CV飛田展男)、那羅王レンゲ(CV林原めぐみ)、闥婆王クウヤ(CV中田和宏)のインドラ(CV鈴置洋孝)側に分かれて戦うことになる。元々インドラも含めて八武衆は仲間だったこともあり、様々な想いが交錯してなかなかエモーショナルな戦いとなる。

また、インドラ側の八武衆を倒した後に登場する獣牙三人衆、特に不動明王アカラナータ(CV松本保典)の圧倒的な強さはかなりえげつなく、手に汗握る展開であった。

後半は、ヴィシュヌ(CV島本須美)の力でガイを除く八武衆が復活して、アスラ神軍側の「十二羅帝」とラスボス破壊神シヴァ(CV若本規夫)との戦いになる。アスラ神軍は純粋な悪役などで前半ようなキャラクターの掘り下げがないので、あっさりとしている。

お気づきかと思うが、CVは今では絶対に不可能なレジェンド級の声優の組み合わせ。ある程度実績のある方を集めた鬼滅の柱とは違い、30年経ても活躍されている方々ばかりで、キャスティングの先見性にはおどろくばかり。

しかし、これだけ良い材料がそろっていながらも、後半の作画崩壊はアニメ史上に残るほどのものと言われ、残念極まりなかった。

男の子たちは「ナウマクサンマダーボダナンアビラウンケンソワカ 修羅魔破拳」と叫んでいたのに対し、女子は美形キャラの推しメンを決めて鑑賞していたようで、男女問わず幅広く支持されていたのはないかと思う。


(以下、観たことある人向け)

ガイの乱心の理由は直接的には明示されていないが、エピローグでシヴァを倒した後に残るアスラ神族のエネルギー・黒のソーマのエピソードが加えられており、観ていた頃は意味が分からなかったが、黒のソーマは万物の悲しみのエネルギーなので、善悪二元論を超えた考え方とガイの元々の優しい性格により黒のソーマを受け止めてしまったのではないかという示唆は後になって分かると感慨深い。
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