平田一

チェンソーマンの平田一のレビュー・感想・評価

チェンソーマン(2022年製作のアニメ)
4.9
“既成概念ぶっ壊す! 理性崩壊!! 最凶のウルトラマッドネスアニメ!!!”

「ファイアパンチ」「ルックバック」の漫画家・藤本タツキさんの代表的傑作マンガをアニメーション化した作品。日常的に出没している悪魔を狩って、欲に駆られる(駆けるともいえる)、主人公の“チェンソーマン”・デンジとチームの物語。従来の日本のアニメで常套手段で採用される「製作委員会(方式)」を蹴って「一社出資」(という大博打)に挑戦したのは「呪術廻戦」「進撃の巨人」「ドロヘドロ」のMAPPAさん。監督は「ゲーマーズ!」のオープニング演出や「呪術廻戦」の演出・絵コンテを務めた中山竜さん。

デンジはヤクザにこき使われてる非正規少年デビルハンター。両親の遺した借金の返済に追われる日々にウンザリしつつも「チェーンソーの悪魔」ポチタと過ごしてた。しかしヤクザの裏切りでポチタと共に惨殺されたデンジはポチタの力によって「チェンソーマン」へと変身――。

地獄の底からチェンソーを鳴らすデンジの行く末は……

内容の賛否両論、Blu-rayの売り上げ不振……そんなことは心の底から知ったこっちゃ!な一人です。そもそもあらゆる作品然り、クリエイターと受け取る側の真っ向勝負みたいなものは古今東西あらゆる世界と場所で常に起こるもの。個人的にはもっともっとクリエイターがイマジネーションを、表面的な道徳規範に揺さぶりをかけてくような、フィクションだから出来ることをもっとやって欲しいです!

そういう意味では「チェンソーマン」、やってくれたと思ってますし、もっというなら至る所に“意図”を感じさせました。

特にボクは「リアリティ」の意味するところに注視です。デンジたちが所属している公安対魔特異課が表立って活躍している一連の場面を見ても、この世界は幾分か悪魔(もとい「狂気的な世界」)が認知されていて、悪魔に対して地震や犯罪レベルと同等ぽかったです。これはボクがラルフ・サーキの「エクソシスト・コップ」を後に読んだせいだと思いますが、その本でとある神父はこんな言葉を言っています。

「悪魔など実在しないという考え方は、かつてない多大な利益を悪魔にもたらしている」

信じるか否かは別に、黒魔術などを使って害を与えようとする人間にはそれらを信じない人間は好都合の獲物だそうで、信じていなければいないほど尚更都合がいいそうです。何故ならそういう人たちは大事な「身の守りかた」を知らないのが高いらしく(書籍の出版当時。ですが今でも言えるかも)、尚更アマチュア・サタニスト(=自分たちの悪魔崇拝の傾向を隠そうともせず、派手な方法をそれを誇示する悪魔崇拝者のこと)の格好の獲物とか。だから作中、大なり小なり、悪魔が地震や犯罪などと同じ認知で描かれている本編は斬新ですし、結構面白かったです。同時に興味深いなって何度も思っちゃいました。

そういう狙いにおけるリアリティーが加わることで、二次元のアニメーションに「重み」をボクは感じました。もっというならハッシュタグに書いた「重力」なんですが、これにはマンガじゃ出来なかったことが出てると思います。

それはマキシマム・ザ・ホルモンさんの「刃渡り2億センチ」という神曲が爆誕し歓喜を与えた第3話(#03「ニャーコの行方」)。コウモリの悪魔とチェンソーマン・デンジの市街戦において、デンジの動きは実写のような重力を感じます。ここを見ていて思ったのは、チェンソーマンことデンジが重力という「制約」を、ひいてはアニメーションにおける「多聞」や「期待」を突き破り、思うがままに暴れようと「抗う」ような姿勢です。それは見ていて感じさせた「狂気」の上に成り立つ「日常」、その場所でも自分自身を「試す」「駆ける」「抗う」ことがどんだけデカくて、難しくって、メチャクチャ試みたいことを、縛りに抗うデンジは勿論他のキャラに抱けました! そこまで意図をしてたかどうかは知りませんし、分かりませんが、ボクはそう感じましたし、思ってしまった次第ですw

何かと比較をされてるアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」やこちらも傑作「サイバーパンク エッジランナーズ」のように作っていればきっと、原作ファンはアニメーションに満足できたと思います。でもそれでは狭いマスに向けたアニメになるのでは? そうなるとクリエイターの成すべきことって何なのか? いろんなことをどういうわけか考えてしまいました(笑)。

誤解無いよう言っておくと「ぼっち・ざ・ろっく」は大好きですし、アニメの方はそちらのレビューを読んでくれたら嬉しいです。後日ガッツリ書かせていただく「エッジランナーズ」にしても、その作品でしか出せないパワーや切れ味内蔵です。MAPPAさんの「チェンソーマン」にかける気合や挑戦は、アニメもとい素晴らしいし、もっと続けてほしいです! そのために出来ることがあるなら色々やりたいし、こういう試みはこれからも増えていってほしいです(一社出資体制なんて覚悟がなければできないし)!

果たしてこれがアニメの良さを伝えているかは分かりませんが、考えうる限りのことをとにかくここに詰めました! 誰が何と言おうとも、ボクはこれを支持します! ライアン・ジョンソン監督の『(スター・ウォーズ/)最後のジェダイ』もそうなんですが「これイイ!」って感じたものは大切にしたいので✨

これでようやく去年まで見たアニメのレビューは書けました。まだまだ残りはあるんですが、ずっとずっと書きたかったアニメチェンソーマンへの思いをこうして書くことが出来てホッとしています(笑)。
平田一

平田一