もこもも

フルーツバスケット 1st seasonのもこもものレビュー・感想・評価

フルーツバスケット 1st season(2019年製作のアニメ)
4.6
"時代を超えて愛される名作ファンタジー"

唯一の肉親である母親を亡くした
天涯孤独の主人公・本田透が草摩家に
隠されたある秘密を知ってしまった事から、
草摩家を取り巻く騒動に巻き込まれていく姿を
描いた恋愛ファンタジー作品

原作は1998年から2006年まで『花とゆめ』で
連載されていた全23巻の少女漫画
アニメは3期5クールの構成で、
最初から感動させられるものの
4クールかけてしっかり深掘られた
1人1人の苦悩と成長の集大成である
3期は終始感動の波が収まらなかった

なんて素敵な作品なんやろ...
感情移入の度合いが異次元で、
多くのシーンで感情が溢れた
当たり前なのに気付けなかったこと、
もう少し頑張れるかもって感じるような
言葉がとっても多くて励まされる
絵も音楽もストーリーも本当に素敵やけど、
その中でも"登場人物"と"心理描写"が
この作品の最も素敵だと感じた魅力

【登場人物】
⚫︎本田透
早くから両親を亡くしてしまった
壮絶な悲劇を背景に持つ物語のヒロイン・本田透
見た目や声、仕草が可愛いだけでなく明るく真っ直ぐな性格や抜けた一面があるところが大好き
父親も母親も亡くなって、それでも暗い影を落とさずいつも明るくしている心の強さに胸を打たれる
透が熱にうなされながらお母さんについて語る第1話からもう感動させられた
お母さんを大切に想う気持ち、自分より他人の為に動いてしまうその優しさに感動させられる
透の素敵さは最初からひしひしと伝わってきて、
『ARIA』の水無灯里は色んなことを素敵だと思えるところが素敵だと感じたのに対して、本作の本田透はお母さんを始めとして大切な人からもらってきた沢山の素敵なことを忘れず、それが透の一部になっているところが素敵
誰に対しても優しくて、その寛大さや慈悲深さ、全てを溶かすような笑顔、そして本当の愛を与えてくれる、そんなキャラクターやった

「自分の為ではなく誰かの為に
 元気になりたいと思えるのは
 なんと倖せな事でしょう 
 私の元気の源はいつも
 "皆さん"が与えてくれるのです」

⚫︎草摩由希
学園でもプリンスキャラとして有名な「ねずみ」憑きのメインキャラクター
由希と言えば王子様のイメージがまず浮かぶけど、そこじゃなくて王子様じゃない子鹿のような弱い一面に感情移入して大好きになってしまう
親に見放されて、孤独を味わって、世の中は真っ暗だと慊人に洗脳されて、普通の人なら持ってるたくさんの物を手に入れられなかった少年時代
そんな由希が透と出会って、手に入れられないと思っていた大切な人や想いに触れて心から笑えるように、そして自分に向き合って戦うことで成長していく姿に涙が溢れる
"透"はゆきとも呼べるんやね
透への大切な想いを恋愛ではなくて母のような愛おしい存在だと気付くところも素敵
確かに少年時代は孤独だったかもしれないけど、透や綾女さんや生徒会メンバーのように、生きていれば、変わることを諦めなければ大切に想ってくれる人って必ずできる
なにより、完璧を求められた子供時代、親に見放された過去という由希と似たような境遇を持ち、由希を王子様ではなく1人の人間として見てくれる真知と出会えたことが本当に良かった
真知との幸せな日々をずっと願っている

「嬉しかったんだ くすぐったいほど
 大勢の人がいる中で
 自分1人を見つけ出してくれたこと
 自分以外の人間が自分のことを想ったり探すのは
 当たり前のことなんかじゃない
 奇跡みたいに幸福なことなんだ」

⚫︎草摩夾
オレンジ頭で「猫」憑きのメインキャラクター
短気でぶっきらぼうやけど、徐々に見えてくる不器用な優しさが堪らなく愛おしい
心をだんだん開いて、不器用ながら透を守ったり、彼女の好意に照れたり、かっこよさと可愛さを併せ持っている夾が大好き
ストーリーを重ねるごとに夾のことが大好きになって、でもこの物語のメインヒーローは由希だと思っていたから諦めていたけど、2期の終盤で夾と透の未来が現実的になってきて、それが3期のOPで確信に変わった時は本当に嬉しかった
由希が嫌では決してないんやけど、夾も透もお互いにこの人しかいないって観ていて感じてしまったから嬉しかった
十二支の中でも異端な「猫」憑きとして生まれたことで味わってきた絶望がどれだけ夾を苦しめて、縛り付けていたのか
お母さんと今日子さんを目の前で失ってしまった悲しみ、罪悪感は自分では理解しきれない絶望の領域ではあるけど、それでも降りしきる雨の中、心に溜まった悲しみの叫びには胸が締め付けられたし感動した
透への気持ちを理解して覚悟した2期では卒業までは一緒に過ごしたいと願っていたからこそ、3期12話でずっと隣にいたいと透に言うシーンには涙が流れた
これからの透との幸せな日々をずっと願い続ける

「すべてを愛してくれなくたってよかったんだ…
 怖がってもよかったんだ…
 俺はちゃんと一緒に考えて悩んで欲しかった  
 一緒に生きていこうって」

⚫︎本田今日子
この物語を語る上で外せないお人好しで真っ直ぐで温かい優しさを持つ透のお母さん
透への愛にただただ涙が溢れる(この文章を打ってるだけで涙が出てくる)
どんな時でも透を想って、笑顔を見せて、透だけじゃなくて魚ちゃんにも花ちゃんにも由希にも夾にも大切な言葉を残していて、一番心に響く言葉をくれる人だった

「人間ってさ 
 他人を求めずにはいられないんだよ
 多分 多分どんなに人に虐げられても 
 絶望しても 家族にどんなに愛されても
 やっぱり他人に受け入れて欲しくなるんだよ   
 きっとさ それに親って
 子供が幸せそうにしてたらさぁ
 それでほんとに充分なんだよ
 だからさ あんたたちもいつかさ
 それぞれ別の道を歩き出すとしてもさ
 薄情とか寂しいとかそんな事ないよ
 続いていくものは
 きっと かならずあるはずだから」

「痛みには優しさが必要で
 暗闇が目立つにはお日様が必要で
 どっちも馬鹿にできない
 どっちも無駄なものじゃない
 だからつまづいて間違っても
 それは無駄じゃないさ
 無駄にするもんかって思ってれば
 きっと自分を育てる肥やしになるさ」

「欲望は誰でも生まれながらに持ってるから
 理解しやすいけど
 優しさは個人個人の手作りみたいなもんだから
 誤解されたり偽善だと思われやすいんだよな
 でも透は...透は信じてあげな
 疑うなんて誰にでもできる簡単なことだし
 透は信じてあげられる子になりな
 それはきっと誰かの力になる」

⚫︎魚谷ありさ
本田透の親友の一人で見た目や強気な言葉遣いに反して優しさも沢山垣間見える、かっこよくて可愛い透想いの魚ちゃん
苦しい過去があったのは草摩家のキャラクターだけでなく、幼いころに母が出ていき、父は酒に溺れという家庭環境の中、暴走族で堕ちていった暗い過去がある
でも憧れの今日子さんと透と出会って、透の真っ直ぐな優しさや今日子さんの助けと言葉により居心地が悪いと思っていた透の家庭がいつの間にか居心地が良くなって、お父さんとも和解して、透と親友になって...それが堪らなく嬉しかった
今日子さんの「肩の力を抜いただけだよ」が素敵
ヤンキー時代の構ってほしいようでほっといて欲しいようでっていう態度にも感情移入したし、たわいもない時間を大事にしようと思って、透の親友になりたいと涙を流したこと、変わりたいって大切にしたいって思えるような大切な人と出会えてよかった
紅野さんへの恋模様も可愛くて、たった2回会っただけなのにこんなに好きだと思えるような人と出会えたことが素敵で幸せになって欲しい

「夕闇迫る街 夕食の香り 光の灯る家
 友達にバイバイを言って帰る家 帰りを待つ人
 微笑んで迎えてくれる優しい人
 私もしかして寂しかったのかな」

⚫︎花島咲
本田透の親友の一人で人の思念を電波の如く感じ取れる力を持ち、常に黒い物を身に纏っている女の子
透と今日子さん除いて女性キャラクターでは一番好き
容姿の美しさとは裏腹に無気力でやる気がないところ、ローテーションな口調、意外と食い意地が張っているところが大好き
魚ちゃんもそうやけど、親友を超えた透への想いにはいつだって胸が温かくなる
文化祭の「シンデレラっぽいもの」でシンデレラ演じる花ちゃんが花ちゃんらしくてめちゃめちゃ面白かった
そんな花ちゃんにも壮絶な過去があって
小さな頃から聞きたくない周りの声が聞こえ、小学校の事件以来魔女として毛嫌され、遠ざけられ、時に暴力と暴言が悪化し、壊れていった心
罪悪感ゆえにそれを当然の報いだと受け入れていた過去
こんなに辛い過去があったのに、それでも人を傷つけないようにずっと過ごしてきた花ちゃん
花ちゃんの家族が花ちゃんを大切にしているところが救いで、特に恵の祈りには心が震えた

「祈るよ この世界に
 人が溢れるこの世界に
 咲を大切に思ってくれる人が一人もいないなんて、
 そんなこと、あるはずがないから 
 だから…会いに来てください!
 できるだけ咲の目の前に早く!」

花ちゃんの1期21話最後の笑顔が最高に素敵
花ちゃんも魚ちゃんも透もみんな本当に辛い過去があったけど、それが無敵の友情に繋がってるんだなぁって

「誰かを大切に想うのは少し辛い時もあって
 寂しくもなったりした
 でもうれしくしてくれるものよね
 やっぱり私の弱点はいつだって透くんなのよね」

もっともっと語りたいキャラクターはいるけど、
特に大好きなはとりさんと潑春の感想を残す

⚫︎ 草摩はとり
一族専属の主治医で「辰」憑きのキャラクター
ほんまにはーさんはカッコ良すぎる
みんなのことを常に心配して、由希への懺悔の気持ちもずっと抱いてて、痛いくらい優しいはーさんが大好き
羽鳥さんとかなさんの悲しい恋の物語
大切な人の大切な記憶を消さないといけない決断、かなさんの幸せを思い続けれる羽鳥さんを観てすごく優しくて強くてかっこいいなぁって
2期12話のはーさんの話は大好き
はーさんが幸せにしてる未来があるっていうだけで
胸が温かくなって幸せになれる
雪が溶けたら春になるもんね

「そうだな 意外に 
 泣くと楽になるのかもしれない
 下手になっていくな 
 年を追うごとにそういうことが
 下手になっていくものだな… 
 俺の代わりに君が泣いた... ありがとう」

⚫︎ 草摩潑春
由希や夾より一つ歳下の「牛」憑きのキャラクター
個人的に作中で一番かっこいいと思うキャラ
なんていうかはーさんは大人な男性のかっこよさを感じて、潑春はシンプルな男としてのかっこよさを感じる
基本マイペースやけど他人のために行動して、他人の為に怒れて、そんな優しさと強さを持っている潑春が大好き
慊人が依鈴を突き落としたことを知った時の潑春の顔は忘れられない、潑春と一緒に慊人への怒りを感じると共にブラック化ではない本当の潑春の怒りに、どれだけ依鈴のことを大切に想っているかが表れていて胸が苦しくなった
そして3期4話で描かれた依鈴の長い旅の終わり
依鈴のただいまとはるのお帰り
この依鈴を抱えて歩くラストは涙が止まらなかった

「やだ おれはガキだけど
 依鈴が一人で傷ついても気付かないで
 俺なんかくだらないなって思ったけど
 でも あの頃よりはガキじゃない
 依鈴を自分で担いで歩けるくらいにはなった
 だから依鈴を諦めない
 依鈴も1人で歩けるところは歩けばいいし
 ダメな時は担がれればいいんだ 
 むしろ担ぐし 
 重荷なんかじゃない
 重荷なんかじゃないんだよ」

【心理描写】

⚫︎ 十二支の物の怪憑き

「物の怪に憑かれ続ける草摩家は
 君が考えるほど楽しいモノじゃない
 奇怪で、陰湿で、呪われている」

常人では壊れてしまうほどの苦悩、痛み、悲しみを経験してきた草摩家の物の怪憑きたち
苦しい想いをしていない人なんて1人もいなくて、
それが十二支の物の怪憑きだけの苦しみじゃなく、
視聴者が共感できる苦しみであるところが
この作品の素晴らしいところ
多くのキャラに共通しているのは家族間での問題で、みんなの痛みが終始胸に刺さり続けた
それでも向き合って、成長して、特に由希たち学生組の変化し続けていく様子には胸の温みだけでなく勇気も貰える

「欲しかったものがある 思い描いていたもの
 抱きしめてくれる両親 帰りたいと願う家
 みんなが笑っている場所
 みんなが離れていかないような自分
 温かい所 温かい人 あるんだ...本当に」

⚫︎ 慊人の存在
十二支の物の怪憑きを苦した要因であり、みんなを縛り付けていた慊人の存在
はーさんの目を傷つけて、杞紗ちゃんに怪我を負わせて、由希を精神的に苦しめて、依鈴を2階から突き落として、正直どんな理由があってもしたことは許せないし、挽回はできないと思っていた...
それでも慊人が女の子という事実を知ってからその気持ちは徐々に変化していって
女の子やから許せるとかの話ではなくて、女の子という事実を知ったからこそ慊人への見方が変えさせられたという感じ
今までの慊人からも孤独感というか哀しさは感じていたし、3期で間違いに気付いて、透と友達になってくれて、外の世界は怖いけど自分で生きていこうと思っている彼女を観て胸が温かくなったのはそういうこと
なによりみんな、慊人のことを恨んでいるわけじゃないから自分一人が許せないなんて言えないし、思えない
生きている限り、やり直せるんだって感じた

物の怪憑きの呪いがなくなった時に
ただ両手を広げて喜ぶんじゃなくて、寂しさも感じるところがすごく自然で胸にすっと染みる
その中でも特に綾女が抱きしめるシーンで、
綾女もずっと願って、欲して、我慢していたんだと気付いて胸が熱くなった

⚫︎由希と夾の関係

最初からライバル関係として描かれていた2人やけど、その2人が透のことを大切に想って、守りたいと気付いて、成長していく様子が素晴らしいし、尊い
1期5話で透が家から出ていってしまう話や1期8話の正月の話で透の寂しさと共に描かれる2人の気持ちや透を想う気持ち
いつもそばにいてくれて、それが支えになると気付く由希と夾の気持ちの変化に胸が熱くなった
3期10話で描かれた由希と夾の喧嘩は最大級で感動した
由希と夾の苦しみと共にお互いを羨ましく思っていた気持ちをぶつけ合う様子に涙が流れて、なんでこんなに感動するんだろうと思ったけどきっとそれは嫌いだと思っていた感情以上の相手に対する憧れを感じたからなんだなって

⚫︎感情移入
冒頭でも記載したけど感情移入の度合いがすごい
だってそうやろ、
透が崖から落ちた時、もし透が死んだらみんなどれだけ苦しんで、夾はどれだけ自分を責めてしまうんだろうっていう気持ち
紅野が刺された時、慊人への怒りより紅野がこんなに報われなくていいのかという絶望の気持ち
こんな感情は感情移入してないと抱けない
主要キャラだけじゃなくて、皆川先輩のゆきに向けた感謝の気持ちにも感情移入して感動した

⚫︎何気ない日常

透と由希と夾と紫呉の4人の日常が堪らなく愛おしい
『夏目友人帳』でも感じたけど、優しく包んでくれるような人と場所があれが、嫌なこと、苦しい事があっても星の彼方に消えていくんだなってみんなの日常を見ていて感じた
庭でカレー作ったり、海で泳いだり、花火をしたり、そういう日常の素朴な楽しい様子も、お化け屋敷の自分設定や文化祭の『シンデレラっぽいもの』みたいに笑えるシーンがあるのも本当にいいよね

「このお家で暮らす日々 大切に 大切に」

最後にこの作品のOPとEDについて、
素敵な作品には必ずと言っていいほど素敵な曲が使われていて、この作品も例外なく全ての曲が素晴らしかった
1期前半OPの「生きる意味をくれたね」のところで親子2人の絵が描かれていてそこがいつ観ても感動してしまう
本作の主題歌だけじゃなくて、2001年放送の旧フルーツバスケットのOPテーマである『For フルーツバスケット』もフルーツバスケットの為に作られたような素敵な曲でフルーツバスケットが好きな人は是非聞いて欲しい

「たとえば苦しい今日だとしても
 昨日の傷を残していても
 信じたい心ほどいて行けると
 生まれ変わることはできないよ
 だけど変わってはいけるから
 Let's stay together いつも」

特にここの歌詞はフルーツバスケットを
観た自分には痛いほど心に響いた
旧フルーツバスケットもいつか観たいな

素敵な作品との出会いに感謝

「1つも道を間違えずに生きてきたら良かったけど
 ないんだ そんなもの
 失敗して、躓いて、迷って、間違って、
 少しずつ、一歩ずつ、歩いていくしかないんだ
 自分の足で 傷だらけになっても
 いつかたどり着く何かの元へ
 誰かの元へ...

 祈りながら さぁ歩き出そう」

⚫︎1期
OP : Beverly『Again』
大塚愛『Chime』
ED : ビッケブランカ『Lucky Ending』
INTERSECTION『One Step Closer』
⚫︎2期
OP : AmPm feat.みゆな『プリズム』
土岐麻子『HOME』
ED : THE CHARM PARK『ad meliora』
MONKEY MAJIC『Eden』
⚫︎3期
OP : WARPs UP 『Pleasure』
ED : GENIC『春うらら』
もこもも

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