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まよチキ!の都部のレビュー・感想・評価

まよチキ!(2011年製作のアニメ)
3.2
2010年代のラブコメディの潮流を汲んだ一作で、昨今の属性特化型のヒロインを軸としたノベルスと比較すると、ヒロインの数=満遍なく個性を取り押さえる形式美で、この『賑やかさ』が売りな感じはやはり嫌いではないです。

CV.井口裕香による通りの良いハスキィな声音をした本作のメインヒロイン:近衛スバルは大変可愛らしく、男性を演じている時の声音と坂町の前で見せる少女的な声音の使い分けがギャップ萌えの基礎を抑えていてアニメーションならではの良さを引き出してるのは本作の明確な良点ですね。主人公とメインヒロイン──それぞれが生育環境に難を抱えており、それによる心の融和は流れとしては自然ですが、コメディ部分が多くを占めているので序盤〜中盤はやや性急に感じる足取りが目立ちます。

しかし男装を強いられている女子と女子が苦手な男子によるアンサンブルは取所で、話として面白いと感じたのは追加のキャラクターが生えてくるまでの4話まででしょうか。

そこからは作品としての優位性が失われている印象で、『女性を過度に相手すると鼻血が出てしまう』という設定は緩和され、他の女子との交流も増えていくので良くも悪くもそれは展開次第で幾らでも転ばせられる設定となり、またシークエンスの繋ぎに気絶が度々用いられるのは作劇上 便利ではあるのですが乱用するのも陳腐かなと。
それらが恐怖症の切実な症状であれば分かるのですが、本作で取り扱われる女性恐怖症は世間一般のそれとは大きく異なる物で、物語の為に体良くデフォルメ化された性質からはそこに付き纏う葛藤などの重みは感じられません。それが作品としての呑み込みやすさに繋がっているのは事実ですが、作品の進行により緩和されたことでスバルとの二人三脚な足取りの良さは薄れていく一方だったなと。

全体的には近衛スバルの無類の可愛さは満遍なく発揮されており、他のヒロインズともイベントをこなしているので、そうした萌えアニメ作品としては不可のある出来であるようには感じませんでした。
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